ビンディン省でチャム塔の遺跡出土、多数のレリーフも

ベトナム中南部ビンディン省のルン・カム(禁断の森)で、チャム塔の遺跡が見つかり、悪魔を倒したとされる女神の象(レリーフ)などが出土した。12世紀後半から13世紀初頭にかけて作られ、チャム文化の特徴を色濃く伝える出土品は、当時の歴史を知るうえでの貴重な資料として考古学者たちの期待を集めている。

このチャム時代の塔の遺跡は、ビンディン省のタイソン郡、ビン・ギ地区、トゥ・ティン・トン村の「禁断の森」と呼ばれる場所にある。かつて、チャム時代に王たちが多くの宗教的な建物を建立した地区だ。今年初めて、本格的な発掘調査が行なわれた。

ビンディン博物館のバー・ディン・ホア館長がリーダーをつとめる発掘チームが遺跡の4カ所の穴を調べ、発掘したところ、数多くの貴重な出土品が発見された。もっとも多く出土したのは、建造物に取り付けられていたとみられる粘土や石製の装飾物で、釉薬をかけたベトナム製陶器やチャム陶器の瓦などもあった。いくつかの出土品の表面にはカラ(タイム神)のレリーフや、マスコットを持っていた手のひらの断片から、シヴァ神(精神と創造的破壊の象徴)の像の一部と推測される像なども見られた。

発見された650点以上の出土品のなかでも、マヒシャ・マルディニ(悪魔を倒したとされる女神)の象と、マム様式の塔、ハスの花のモチーフで飾った祭壇などは特によい状態で見つかった。女神の象はかなり大きい石象で、ホア氏によると、チャムの宗教施設などの入り口の装飾に使われていたとみられ、当時の建築美術を知る上で貴重な資料となりそうだ。

出土品や「禁断の森」の遺跡は、発掘隊が調べたところ、12世紀後半-13世紀前半のものが中心だった。今回の調査で、塔と門の遺跡の全容が明らかになったほか、大小さまざまの瓦も大量に発見された。このなかには8-9世紀までさかのぼるものも含まれており、葉っぱの先端のようなかぎ状の瓦は13-15世紀のものだった。今月出版された発掘調査についての報告書で、ホア氏は、「これらの発掘から、この場所にはもともと葺き屋根の家があり、その後、レンガ製の建造物が作られたとみられる」と推測している。

禁断の森の塔の建造技術は、通常のビンディン様式の塔の複合建築技術と似ているものの、建築の手順などに違いが見られるという。また、通常は列を作るように配置されるレンガの塔も、禁断の森の塔ではそうではなかったという。

マム塔の様式で ハスをモチーフにした祭壇と、禁断の森の遺跡から発掘された建築装飾の一部

禁断の森の塔は、土台の処理方法も特徴的だった。多くの塔は、川砂利や砂を植物性の接着剤で固めて、丁寧に打ち固めて表面の仕上げ処理をしてあり、この下にはラテライトの層があることが多い。しかし、禁断の森の塔では、基礎部分も川砂利や砂で作られており、ラテライトの層はみられない。また、禁断の森の塔の周辺は、レンガの層が12周、取り囲んでいたこともわかった。

周辺の小道でも、圧縮された砂利の下から、土台となる瓦の層が発掘されたが、ここの出土品は古いもの、新しいもの織り交ぜて多数の瓦が出土した。このことは、塔が一度建てられた後、さらに経済的に発展したことから、後により大規模に建て直された可能性を示しているという。

禁断の森の遺跡は、現在は歴史的文化財という位置づけではないが、ホア館長は「今回の発掘調査とそれから得られた数々の貴重な発見によって遺跡の重要性が再認識された」として、遺跡一帯の保護と保全を提案している。