伝統音楽をパフォーマンスに 「ソウル・オブ・ベトナム・ビレッジ」

ベトナムの伝統音楽を、地方の文化や暮らしとともに伝えるアートパフォーマンス「ソウル・オブ・ベトナム・ビレッジ」がハノイで上演され、話題を呼んでいる。ベトナム・エコノミック・ニュースのホア・クィン記者が、舞台のサブディレクターを務めるVTCデジタルテレビのグエン・バン・ビン氏に制作の経緯や反響を聞いた。

写真=ベトナムの伝統音楽とともにパフォーマンスが繰り広げられる「ソウル・オブ・ベトナム・ビレッジ」の1場面(いずれも)

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─「ソウル・オブ・ベトナム・ビレッジ」は、伝統音楽の集大成ともいえる作品に仕上がっている。舞台の内容や特徴を
「舞台は、ベトナムの北部、トンキン湾に面した紅河デルタの一日、早朝から深夜までの様子を、地域の人々の暮らしを通して再現している。市、収穫、夏の一日、働く人、髪を洗う若い女、村の祭り─の7つの場面があり、ユネスコの無形文化遺産に登録されている伝統音楽、カーチューやチャウバン、バクニン省のクァンホ、宮廷音楽にのせて、それぞれの場面が演じられる。演奏には籐や竹などから作られた二弦のチター、フルート、太鼓、その他の伝統楽器を使用し、農村の人々や活気あふれる生活や豊かな自然、愛を音楽とステージパフォーマンスで表現した」

─作品の着想はどんなところから?
「多くのベトナム人同様、私も伝統音楽の衰退を心配している。皮肉にもそれらの多くは、無形文化財として国際的な評価は高まっているが、大半のベトナム人の関心は最新の流行音楽にある。近年、観光が成長産業となり、多くの観光客がベトナム固有の歴史、文化を求めるようになってきた。水上人形劇やシクロ(自転車タクシー)による市内観光、ベトナム民俗学博物館というハノイ観光の定番に加えて、リピーターがより楽しめるものが求められ、さまざまなものが創造されつつある。

文化観光当局も、伝統文化を伝えるユニークなエンターテインメントの創造を奨励してきた。そんなことを考えながら、旅行会社の人たちとチベット旅行をしたとき、「ソウル・オブ・ベトナム・ビレッジ」のアイデアがひらめいた。さっそく友人や同僚、アーチストに話したところ、過去の失敗例などを挙げ、実現は難しいと否定的な人も多かった。しかし、それ以上の人たちが、アイデアを好意的に受け止め、支援してくれた。そんな励ましを受けながら制作を進め、昨年9月に舞台の内容を完成させ、さらに1年をかけて今回の上演にこぎつけた」

─旅行業界や関係者向けのプレミアの反響は?
「舞台を観た大半の人が感激してくれた。観光客にもきっと受けると思う。内容も、首都で上演するエンターテインメントにふさわしい作品という高い評価を得ている。数多くの旅行業者が、ツアーに組み込んでくれることを約束してくれた。プレミア上演後には、政府観光総局(VNAT)が約100万円の補助を決定した。こうした支援があれば、舞台をより長期間にわたって上演し続けることができるので、とてもうれしい」

─舞台の内容については今後も改善を続けるそうだが?
より多くの観客に受け入れられるようにさらにブラッシュアップを続けている。よりもおしろく、より洗練された内容にするために今後も努力し続ける。われわれにとって、最終目標は収益ではなく、ベトナムの伝統音楽の維持、継承だ。この舞台が、ベトナム国内外の観光客や、外交行事や文化活動によって広められることを期待している。舞台を観れば、きっと多くの人がベトナムの伝統音楽の美しさに共鳴してくれると信じている。

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「ソウル・オブ・ベトナム・ビレッジ」はハノイのホンハ・シアター(Hong Ha Theater)で火、金、土曜に上演される。チケットは1人20万ドン(約1000円)。上演時間50分。