無形文化遺産の民俗芸能「バイチョイ」、地域で進む伝統継承

昨年12月、ユネスコ無形文化遺産に登録されたベトナム中部の民俗芸能「バイチョイ(Bai Choi)」。韓国・済州島で開かれた無形文化遺産保護条約政府間委員会の第12回会合で決定し、これによってバイチョイは、ベトナムで「人類の無形文化遺産の代表的な一覧表」に掲載された10番目の遺産となった。決定は、24人のメンバーの全会一致で決まった。

バイチョイは、中部のクアンビン省、クアンチ省、トゥアティエン=フエ省、クアンナム省、クアンガイ省、ビンディン省、フーイエン省、カインホア省とダナン市に古くから伝わる民俗芸能で、16~17世紀に官僚のダオ・ズイ・トゥ(1572-1634)が、農家の作物を保護しようと創作したのに始まる。

同政府間委員会は、バイチョイについて、ベトナムの村における娯楽・芸術として重要な文化活動であると評している。音楽、詩、演劇、絵画、文学を融合した芸術であり、その形態は、大きくバイチョイ遊びとバイチョイ演劇に分けることができる。バイチョイ遊びは、旧正月に竹小屋で遊ぶカードゲームであり、バイチョイ演劇は、男性と女性の演者が、籐のござの上で行うパフォーマンスを指す。

バイチョイは、ヒエウアーティスト、ソロバイチョイパフォーマー、カードを作るアーティスト、小屋を作るアーティストによって実践され、農村コミュニティにおける重要な文化であり、遊びでもある。パフォーマーとその家族は、歌のレパートリーや歌唱技能、演奏方法、カードの作成方法を若い世代に伝えることで、文化習慣を守るという重要な役目を果たしている。

これらの演者たちは、コミュニティごとにバイチョイの練習チームを作り、その数は90団体ほどある。ほとんどの演者は、家族とともにスキルを学び、そのスキルも主に口頭で伝えられるが、バイチョイの専門家は、クラブや学校、機関で、知識やスキルを教えている。

クアンナム省の歴史都市、ホイアンは、有形・無形文化の「生きる博物館」として知られている。バイチョイは、観光客に披露するだけでなく、地元の人々の精神的・文化的な生活を支える重要な存在でもあるようだ。

ホイアンの演者、フン・ティ・ゴック・フエさんは、「子供の頃は子守唄を歌うのが大好きだった。19歳の時に、バイチョイを歌うために移動楽団に入り、33年以上にわたって歌ってきた。バイチョイの歌手になるためには、まずは、美しく強い声と適性が必要」と語る。フエさんは今、12、13歳の子供たちにバイチョイの歌唱法を教えている。ホイアンのグエン・ズイ・ヒエウ中学校に通うヴォ・ティ・ホアン・トーさんは、「バイチョイを学んで、観光客に披露するために、ほぼ毎晩クラスに来て練習している」と話す。

バイチョイは、1998年からホイアンの公式舞台で実演されている。演者のグエン・ルオン・ダンさんは、Vietnam Economic Newsに対し、「私は1980年代に、伝統芸術を演じてチームに貢献しようと、農業共同体の移動楽団に入ってすぐにバイチョイを歌い始めた。そして以降、人生を芸術にささげてきた」と語った。