名画の街並みハイテクで再現 画家、ハイの展覧会

古きよきベトナムの風景や人々を描き続けた画家、ブイ・スアン・ハイの作品をプロジェクションマッピングなど最新の技術を使って紹介する展覧会が先月、ハノイ博物館で開催され、若者を中心に大勢のファンが訪れた=写真

20世紀のベトナムのアート界を代表するハイは1920年、当時のハタイ州キムホアン村(現ハノイ)出身。88年に没するまで、ハノイの旧市街地の姿を今に伝える多くの優れた作品を残した。他にも肖像から山々の風景まで、幅広いジャンルの作品を描き続け、中でも北部の伝統的歌劇、チェオ(Cheo)をモチーフにした一連の作品には、舞台だけでなく楽屋の演者の姿も生き生きと描かれ、伝統文化を伝えるアート作品としても貴重な存在となっている。

ハノイという街の姿だけではなく、その「魂」まで描かれていると評される1950~70年代の旧市街地を描いた代表作は、まるで一本一本の筆跡から、画家自身の記憶や郷愁、悲哀が伝わってくるかのようだ。

「ハイの通り」「ハイのチェオ」「ハイの友人」の3つのコーナーで構成された展覧会では、壁や柱に映像を映し出すプロジェクションマッピングや音響装置などのマルチメディアを使って、ハイの作品空間を立体的に再現。「映像と音響を使った双方向的な体験を通して、ハイの作品に対する理解を深めてもらえるようにした」と同博物館のグエン・ティエン・ダ・ディレクターは話す。

訪れた人は、あたかも絵の中の街を歩いているかのような幻想的な体験を味わった。来館した米国人女性は、「まるで、当時のベトナムの街角を歩いているかのような感覚。作品の世界観を、よりリアルに感じることができた」と話していた。ハイの住んでいたThuoc Bac(チュックバック)通87の自宅は、ミニ博物館として、作品を展示している。