モン族の魂伝える楽器 山々に響くケンの音色

ハジャン省のドンバンを訪れる人は、青い山々にこだまするモン族伝統の竹笛、ケンの音色を耳にすることになるだろう。ケンは、モン族の魂そのものとも言える楽器で、この世と神々の世界をつなぐ神聖な道具でもある。今年の旧正月の祭りでも、心のこもった演奏が披露された=写真。

モン族の伝統文化継承や観光振興を目的に毎年旧正月に開催されているモン笛祭。男たちが演奏するケンの音色が中国国境地帯に広がる山あいの村に響く。バグパイプのようにたばねた6本の竹笛につながるリードに息を吹き込みながら、男たちは巧みに楽曲を演奏した。

モン族にとって、ケンは単なる楽器ではなく、日常の暮らしと神、精霊の世界をつなぐ大切な道具の一つとされる。男子は、幼少のころからケンの演奏を教え込まれ、成長するとその踊りや演奏を披露する。演奏に優れた者は、村の名誉とされる。

葬式では死者の霊に語りかけ、結婚式では親から子供へのメッセージが音楽を通して伝えられる。また、愛情や恋心を伝えるときにも使われる。モン笛祭で披露される演奏は、愛する女性を思う男性の心情が表現されているという。

いつの時代も、ケンはモン族の暮らしの中心にあった。どんなに時代が変わろうとも、これからも末永く子孫に伝承され続けていくのだろう。