アオザイのふるさと─フエ 古都の歴史、文化を今に

ベトナム伝統のロングドレス、アオザイは今やベトナム文化を代表する存在となっている。エレガントでユニークなこの民族衣装は、古都フエの黄金時代を今に伝える。

フエの女性にとって、アオザイは欠かすことのできない衣装だった。そのルーツは約300年前の1744年にさかのぼる。当時、地域を治めていた広南国(16~18世紀)の君主、グエン・フック・コアット は、王宮に関するさまざまな施策を打ち出した。その一つが、王宮での正装をアオダイにすることだった。以後、王朝の続えるまで、公式の場においてアオザイは不可欠な存在となり、その後の君主が庶民への普及をうながしたとされる。

研究者のグエン・ザン・ホア氏は、フエのアオザイには独特の特徴があると指摘。「5つの胴衣からなる当時のアオザイは、美の哲学を象徴していた。前の4枚と後ろの1枚のフラップは4人の両親と子供を表している」と話す。そのうえで、古都の歴史、文化を今に伝えるフエのアオザイを、一つのブランドとして保存継承していくことが必要だ、と強調した。

トゥアティエン=フエ省文化スポーツ局の主催で2020年に「フエ―アオザイの都」と題して開催された会議では、フエがベトナムのアオザイを育んだ地であるという科学的、歴史的なさまざまな根拠が示された。参加した研究者らは、アオザイの変遷や大衆化の過程について意見交換するとともに、地元を代表する特産品にすることなどについて話し合った。