心打つピュアな音色 ベトナムの多彩な竹楽器

ベトナムの文化を象徴する素材の一つが竹だ。とりわけ地方部において、竹は日々の暮らしに欠かすことのできない大切な存在となっている。用途は多く、その一つが伝統音楽を奏でる楽器作りだ。響きがよく、澄んだ音を奏でる手作りの竹楽器は、ベトナムの誇る文化の一つと言える。

写真㊤=何本もの竹管をつないで作るトルン。木琴のようにばちでたたいて演奏する

竹楽器には管楽器と弦楽器、打楽器の3種類がある。笛とパンパイプには竹の幹が使われる。鈴や太鼓のばち、カスタネットは竹の根から作られる。このほか、中部高原地帯の打楽器、トルン(T’rung)やディントット(Dinh Tut)、コニ(Ko Ni)、ベトナム二胡、16弦のツィターなどがある。

キン族やモン族、タイ族など、ほぼすべての少数民族が竹楽器を使う。最もよく知られているのは、トルンやモノコード(一本弦の弦楽器)で、他の国でも同様の楽器が見られる。あまり知られていないものに、中部高原地域のクロンプット(Krong Put)やディンパ( Dinh Pa)、コニ(Ko Ni)などがある。

長い歴を持つ竹楽器は、心地よい響きと音色で多くの人々の心を魅了し、夢や想像をはぐくんできた。ユネスコの無形文化遺産に登録されている愛の二重唱・クアンホ(Quan Ho)やソアン(Xoan)、カチュ(Ca Tru)など伝統歌謡の演奏にも竹楽器は欠かせない。そのリュアな音色によって少数民族の心、ベトナム人の心は一つにつながれてきた。



パンパイプを奏でる男性



竹で作る笛の澄んだ音色は、伝統音楽に欠かせない



打楽器から管楽器、弦楽器まで。民族によって、独自の竹楽器が伝えられている