IT業界での日越交流が活発化している。このほどハノイで開かれた情報技術の協力促進イベント「第8回ジャパンICT(情報・通信コミュニケーション)デー 2014」では、日本のIT人材不足を補完するため、人材育成に力を入れるベトナムの現状などが報告された。

イベントは、ベトナムソフトウェア・IT協会 (VINASA)と、日越IT協力クラブ(VJC)が共催。日本企業の事業委託先として、ベトナムのIT業界に関心が高まっていることを受けて、2007年から毎年開催している。今回は、日本企業47社から約100人が参加して過去最大の規模となり、日本企業のベトナムIT業界に対する注目度をうかがわせた。

日本の情報処理推進機構(IPA)によると、ベトナムは2012年以来、日本のIT企業との提携規模で第2位の座を占める。同機構の統計によると、「もっとも好ましいITパートナー国」としてベトナムを選んだ日本企業は全体の31.5%で、インドの20.6%、中国の16.7%を大きく引き離した。文化的価値観の近さや、安価な労働賃金という魅力に加え、ベトナムが毎年IT関連の大卒者数を約4万人輩出しているという、豊富なIT人材も、日本にとって魅力的な要素の一つとなっている。

日越IT協力クラブのグエン・ドアン・フン議長は、「日本は2020年の東京オリンピックなど重要案件を抱えてIT人材の需要が急増し、人材不足ぎみだ」と説明。ここに、ベトナムのIT企業が入り込む余地を見出だす。

課題は人材育成
フン議長によると、日越の情報通信面での協力はここ数年に急増しており、特に、ベトナムへのITの外部事業委託(オフショア開発など)が注目されているという。

このほど、 北海道の産学官連携型NPO、札幌ITフロント(SITF、代表理事=山本強・北海道大学大学院情報科学研究科教授)が、ベトナムソフトウェア・IT協会と、「ベトナム・ハノイにおける即戦力IT人材の育成のための教育環境強化事業」で協力の覚書に調印した。これはJICA草の根技術協力事業(2014-2016)に採択され、ベトナムで新しくIT人材を育成する訓練や、すでに業界で働いている人たちの技術向上などを目指す。

日本側の事業関係者によると、家電製品・機械などへのIT組み込み技術▽スマートフォン向けアプリケーションソフト▽ウェブサービス開発―の3分野を含む、さまざまな知識や技術を備えた人材を育て、ベトナムの中核となるようなチームを設立することを目的としている。

日本企業は、さまざまな大型プロジェクトで協力が得られるようなIT人材を確保している提携企業を求めており、ベトナムの中小企業にとっては参入が厳しかった。ICTデーに参加した日本のIT分野の最大の業界団体、情報サービス産業協会(JISA)は、「両国の業界が協力できるようIT人材を育成することと、ベトナムと日本での大型のITプロジェクトの展開を実現することが、今後の2つの主要な課題だ」とした。

ベトナムソフトウェア・IT協会はこのほど、ベトナムのIT企業約30社の協力を得て、今年の日本市場の展望や日越のIT連携の現状を調査報告書にまとめた。これによると、「全収入が日本企業との取引による」と回答した企業が17%にのぼる一方で、10.7%の企業はソフト開発や輸出などで日本企業と協力した経験がまったくなかった。また、調査した全企業の42%は、日本企業とパートナーになるために「日本語能力が必要」であるとしており、 32%が2015年中に、日本市場にビジネスを拡大する計画を持っているという。