廃棄される電子機器 メーカーなどに回収義務付け

ベトナムは2015年1月から、不用になった携帯電話などの電子機器の回収が、メーカーなどに義務付けられる。増える一方の〝電子のゴミ〟問題の解決がねらいだが、実施前に課題も見えてきた。

メーカーや輸入業者らの製品回収義務を定めたのは「廃棄製品の回収・処理に関する首相決定(第50/2013/QD-TTg)」。これによると、回収の対象となるのはバッテリー、電球、コンピューター、プリンター、ファクス、デジカメ、携帯電話やタブレット端末、DVDレコーダーなどの電子機器。大型コピー機のほか、テレビ、冷蔵庫、エアコン、洗濯機などの家電製品は、2016年1月から対象となる。

これまで長い間、ベトナムは電子廃棄物の管理に消極的だった。メーカーや輸入業者、販売店は、環境保護のために使用後の製品を回収したり、リサイクルや廃棄などの処理をしたりすることもなく、ただ製品を消費者に売り続けてきた。その結果、家庭や事業所などで不用になった電子機器類は、誰の管理も受けず捨てられたり、くず鉄業者などへと売られているのが現状だ。
電子廃棄物の処理ライセンスを授与されている企業はベトナムに15社あるが、そのうち、製品リサイクルや廃棄中の金属類の除去や廃棄などの処理を含めた、完全な廃棄処理工程を整備済みなのは、ハノイとハイ・ゾン、ビン・ゾンにある3社だけだ。

この首相決定を施行するには、廃棄製品の回収方法や処理施設までの輸送をどうするかなど、まだ明確にしなければならない課題がいくつもあると専門家は指摘する。

一方で、専門家らは「現代のベトナムの社会や経済、環境状況を考えれば、首相決定は不可避だ」とも言う。そして、使用済み製品を無秩序に捨てて自然環境を悪化させることのないよう、きちんと回収拠点に持参することを消費者に呼びかけていく。

天然資源・環境省は今、首相決定に基づいて、廃棄製品の回収、輸送、処理などについての具体的な規則を定めるために、意見の集約を進めている。それによると、消費者の利便性を考えて、「メーカーや輸入業者は不必要になった製品を回収する専用スポットを設けなければならない」という規定が盛り込まれる見込みだ。回収場所の数や規模は、製品販売量やそれぞれの製品の特性に応じて決定する。適切なサイズの回収容器を設置したり、有害物質が周囲に漏れ出さないための配慮を施したりといった、さまざまな基準を満たさねばならない。また、拠点には、廃棄電子機器の回収場所であることを明記し、英訳文つきの看板を立てる必要がある。回収にあたっては、メーカーや輸入業者は、自社が製造または販売した製品だけでなく、他社の同じような製品も回収が可能という。この通達は、発行されれば即日から有効となる予定だ。

科学技術省の統計によると、ベトナムでは9万トン近い電子機器が毎年、廃棄されている。電子機器の内部部品は、鉛やスズ、その他の重金属を含む。これらが、適切な処理をせずに埋め立て処分されたりすると、有害物質が土壌や地下水などに染み出し、人体や環境への悪影響が懸念される。