研究成果の商用化が急務

科学技術省によると、ベトナム国家知的所有権庁(NOIP)に登録された発明や新技術のうち、商用化するための技術移転契約がなされたのは、2003年から今まででわずか百数件だという。貴重な研究成果が生かされていない現状を象徴する数字で、研究機関と大学、企業間の連携不足が浮き彫りになった。

可能性秘めた技術も 少ない実用化
毎年ベトナムでは、個人や民間団体、大学や企業などが何千件もの発明や研究成果を公示している。 NOIPがこれまで登録を受け付けた発明や特許は、41254件にのぼる。また、外国の技術特許などを記した書類も、およそ3000万件保有しており、このうち31500件はすぐ参照できるようにベトナム語に翻訳済みだ。

研究成果や発明がこれほど豊富にあるにもかかわらず、それらの商用化は非常に限られており、実際に活用されているのは12-15%に過ぎない。実際に商用化されたり、商用化のために所有権を移転契約が行なわれたりしたケースは、毎年10件程度だ。

グエン・クアン科学技術相は「多くの研究機関や大学が幅広く開発や発明をしているものの、技術の供給源である研究機関や大学と企業ニーズとの間に隔たりがあるために、商用化の機会が生まれない」と分析する。「ベトナム企業がそのような革新的技術を必要とするときは、現状では、海外企業などから供給を受けるということになり、金銭と国内の知的資源にむだが生じている」。

最近導入された設備や新技術の約65%は日本や台湾、シンガポール、韓国や中国から導入されてきたものだ。これらを求めていたのは主にベトナムの中小企業だが、導入された新技術や設備は実際のところ、ベトナム国内の技術を応用しても製造可能だったものが多い。

打開策を探る
多くの専門家は「ベトナムの科学分野における国の資本投資が研究開発専門になっており、製品化、実用化の最終ステージまでの面倒をみていない」という点を問題視する。ベトナムの科学者らは、新技術完成を支える枠組みを欠いているのが現状で、さらに決定的なことには、企業ニーズの情報がまったく届いていないのだ。

加えて、海外から技術輸入をするか、または国内でどのような代替策が可能か検討する以前に、企業はそれにかかる費用や品質、効率などを考慮しなくてはならず、これらの点で外国からの技術導入のほうに分がある。国内技術の活用を促すためには、新技術の試用期間中に使える資金の借入や税金の減免など、国が支援策を設けることが求められる。

過去において、研究結果の商用化は、多くの国々で主要な経済政策の一つだった。例えば、米国は1980年代に、米国の大学がもつ革新的な技術を商品にするため、技術を企業へと移転する橋渡し機関の設立を大学に促した「バイ・ドール法」を施行している。韓国も2000年に、技術移転を促す同様の法律が制定された。納税額の減免や資金援助などにより、韓国は国立技術移転センターを設置したほか、公立の研究開発機関内に技術移転サービスを提供する機関を設立することができ、自国の新技術の産業界での活用が加速しており、このような各国の例がベトナムの手本になりそうだ。