ベトナムギフト・ハウスウェア協会(Vietcraft)は、ベトナムの手工芸業界におけるデザインの充実、商標権の確立、自然配慮型の商品開発などを目指すプロジェクトを始動させた。ベトナムではまだなじみが薄い概念だが、このプロジェクトが第一歩となり、今後広まりをみせると期待される。

同協会のレ・バ・ゴックさんによると、このプロジェクトは欧州のビジネス支援施策である「多角的貿易支援プログラム(EU- Mutrap)」の一つ。約55万ユーロの費用のうち、同プログラムが約47万ユーロを負担する。プロジェクトでは、ベトナムの工芸品のデザインや商標権の確立、自然環境に配慮したエコ商品開発などに力を入れ、ブランド価値を持続していくことでヨーロッパ市場にアプローチできるよう、中小企業の能力を高めていく。

実際、デザインや商標、そして自然環境への配慮を重視するメーカーや企業は、世界の工芸市場ではめずらしくない。ヨーロッパやアメリカの厳しい消費者は環境に優しいECO認定製品を選択する傾向があるため、H&M ホーム、ザラ・ホーム、イケアなどの有名な雑貨・家具の小売企業は、デザインで競うのはもちろんのこと、〝エコ〟を商品開発の主眼としているほどだ。

レ・バ・ゴックさんによると、ベトナムの工芸業界ではまだ、デザイン開発やブランド価値、自然環境への配慮という考え方は新しく、多くのベトナム企業はその重要性を十分に理解していないという。ベトナムの工芸関連企業1600社のうち約5%は国際基準のISOやSA8000、BSCIなどの品質や生産環境等の基準を守っている。また、毎年150億ドルもの輸出も達成している。だが、発信力の低さから、世界市場でのベトナムの工芸品の知名度はまだ低い。

「同じ東南アジアのタイ、インドネシア、フィリピンに比べ、ベトナムの工芸品は製品のデザインや材質の工夫などの点で競争力が弱い。ベトナムの工芸品の90%が顧客らの依頼先から発注されたデザインに基づいて製造し、顧客の商標を付けて輸出するスタイルだ。また、製品はほとんど天然素材を使用しており、機能性や技術面での変革もみられない」とVietcraftのド・バン・コイ副会長は語る。

独自デザインの開発やブランド価値の創造、商標権の確立、自然環境への配慮などは、ベトナムの工芸業界にとって大切な歩みであり、市場拡大や価値増加、競争力を高めるために欠かせないポイントとなる。世界の工芸市場は、価格と品質で競争する時期を過ぎ、いまや独自性で競う時代に入った。となるとデザインやブランド、環境配慮が非常に重要になってくる。しかし、どこから始めればいいのか?誰が支援してくれるのか?業界の多くの企業がもつ疑問だ。

これらの問いに答えて、Vietcraftのレ・バ・ゴックさんは言う。「われわれのデザインやブランド・商標権、自然配慮型製品の開発プロジェクトが、ベトナム工芸業界における最初の一歩となる。Vietcraftなどが、質の高いデザインを提供し、〝ベトナム・ブランド〟の確立を支援するとともに、工芸品の海外輸出を後押ししていく」。

今後、プロジェクトは200社を選んでデザインやブランド構築などの研修を行う予定。また、最低でも50社に、製品コレクションの発展のための投資をサポートする。さらに、ベトナム独自のデザインコンテストも計画しており、入賞した製品は工芸品の展示会に出品するなどして、商品をPRし、販売市場開拓を後援するという。