原油価格下落がベトナムの石油関連産業や国民経済に影響を与えている。原油を主力輸出品としながら、精製設備の不足から石油製品に関しては輸入国という、複雑なお国事情を抱えるベトナム。原油輸出の歳入減を見込んだ政府は、石油関連製品の関税率アップに踏み切った。今後、どのような事態が予想されるのか。ベトナム・エコノミック・ニュースのグエン・ハイ記者とクイン・ミン記者が、ベトナム石油協会のファン・テ・ルー会長に聞いた。

─世界的な原油価格下落はベトナム国内の石油関連企業にどのような影響をもたらしているのか?

石油価格、とりわけ原油価格の下落は異常と言えます。実際のところ、1バレルの価格が100㌦から54㌦前後にまで下落し続けています。こうした下落は、ベトナム国内の消費者とエネルギーの安全保障を担うガソリン、石油輸入業者に大きな打撃を与えています。

たとえば、ある輸入業者が1バレル90㌦で購入したとして、その原油が港に到着したとき1バレル60㌦に下落した場合、非常に大きな損失が生じます。ガソリン、石油輸入大手は、少なくとも30日分の備蓄を用意しなくてはなりません。そのため、価格急落によって多大な損失を受けます。さらに、銀行からの借入金の金利などがそこにのしかかってきます。

国内販売量の落ち込みも大きな問題です。ベトナム石油協会の調べでは、国内のいくつかの給油所では、販売量が40~50%減となっています。石油需要は25%下落するとみられています。2014年の1-9月の輸入量は、昨年同時期の1000万㌧から大幅に減少し、690万㌧になっています。

―ガソリンと原油価格の下落は、消費者にとって何かメリットはあるのか?

短期的には、価格下落は消費者にメリットをもたらします。特に石油関連のサービス業の場合、サービスにかかるコストを下げることなく、原油価格下落分の恩恵を受けることになります。しかし、政府においても民間においても、長期的にはマイナス面の影響が大きくなってきます。まず、原油輸出からもたらされる政府の歳入が減り、企業や国民にも影響が出ることになるでしょう。

―関税率のアップについてどう考えるか?

先月、政府はガソリン輸入税が18%から27%に、軽油が14%から23%に、灯油が16%から26%に増税されました。政府は、国際的な原油価格変動に対応したガソリンと石油取引の適正な基準を設けなくてはならないとし、ガソリンと石油の関税率アップは長期的、マクロ経済的な視野における一つの措置であると説明しています。

石油関連企業も消費者も、国内のガソリン価格に原油価格の下落が十分反映されていない状況での関税率アップは望んでいません。しかし、財政赤字を抑制するためにも、政府の決定に前向きな態度で臨むべきでしょう。

―原油の国際価格は40ドルまで下がる可能性も出てきた。ベトナム石油協会は、企業と国益、公益とをどのように調整していくのか?

私見ですが、原油の国際価格はさらに下落する可能性があります。しかし、いずれは再び上昇する、と多くの経済専門家が予想しています。問題は、当面の原油価格下落にどのように対処していくかです。ベトナムのガソリン、石油関連企業はもっと販売促進に力を入れなくてはなりません。小売りのネットワークの改善を進める必要もあるでしょう。

政府には、経済に対するインパクトを軽減するよう多様な“治療法”を組み合わせ、国家と企業、消費者の利益を調整していくことが求められるのではないでしょうか。