ベトナムでコーヒーの投機的買い込みの動き 市場の品薄に拍車

ベトナムで多く栽培されているロブスタ種のコーヒー豆を最近、投機的に買い込む動きが見られるという。前代未聞のコーヒー豆の買いだめは輸出の減少まで引き起こしており、コーヒー豆の世界的な不足に拍車をかけている。

ロブスタ種のコーヒー豆はカフェインを多く含み、インスタントコーヒーやブレンドコーヒーの原材料として人気が高い。それが、コーヒー市場の専門家によると、「ここ数週間の間、投機的に売買されている」という。

〝にわか投機家〟となっているのは貿易商から公務員まで、すぐに使うあてのない資金が少しばかりあるという、あらゆる人たちだ。上昇傾向にあるコーヒー豆の値段が一定価格を下回ると、今後の値上がりを期待し、せっせと豆の買いだめをしているという。ベトナム・コーヒー・ココア協会(Vicofa)のド・ハ・ナム副会長は、「豆の価格が1キロ40000ドン(2ドル)以下になると、投機購入が見られる」と分析する。

この投機的な買いだめ行為によって、ベトナム産ロブスタ種の3月の輸出は、2月に続いて減少する可能性が濃厚だ。昨年10月~今年2月までのベトナムからのコーヒー輸出は、前年同時期と比べ11%減少し、894万袋(1袋=60キロ)だった。3月の輸出量が2月と同程度になったとしても、10月~3月までの総輸出量は、前年の25%減に落ち込むと見込まれる。

話はベトナム国内にとどまらない。ベトナムからの輸出減少は、この10年ほどで最も深刻といわれる世界的なコーヒー豆の不足を、さらに加速させる可能性がある。

ベトナム国内では、ロブスタ種の価格が7週間連続で上昇しており、2月24日には1キロ41100ドンに達した。それでも投機家らは無反応で、売りに転じなかった。水不足とコーヒーの疫病による発育不良により2014-15年はコーヒー豆が不作だったため、コーヒー市場がさらに上ぶれし、価格が45000ドン程度にまで上昇するとにらんだからだ。

貿易関係者らは、コーヒー生産が盛んな中央高原で雨季となる5月まで、遅ければ6月になるまで、投機家らは買いだめした商品を放出しないだろうとみる。

ベトナムでの生産減に加え、ブラジルやインドネシアでも収穫量が減っており、米インターコンチネンタル取引所(ICE)のICEフューチャーズは今年の末ごろには1トン2115ドルまで上昇する可能性がある。これは、現在の価格の10%増にものぼる。

だが、実際にわれわれが飲むコーヒー1杯分の値段が来年、値上がりしているかといえば、まだ判断はつきにくい。ベトナムでのコーヒー豆の買いだめにより、国内で流通していない豆の総量が推測できず、投機家が手元の豆を一斉に売りに出したときの市場への影響を予測することが難しくなっている。また、コーヒー専門業者らは、10月ごろとなる予定の今年のコーヒー豆の収穫を予測するにも、まだ時期が早すぎるため、今後の市場への影響は不透明だ。