ハノイミルクの買収を検討 インドネシアのティガ・ピラー社

インドネシア食品最大手で、食品加工や椰子栽培などの事業を手掛けるティガ・ピラー・セジャウテラ食品が、ベトナムの乳業メーカー、ハノイミルクの買収を目指しているという。ティガ・ピラーの財政責任者が、両者の交渉が近々終結する見込みだと明かした。

写真㊤=買収が持ち上がっているハノイミルクの工場

ティガ・ピラー社は、インドネシアでも最大級の食品メーカー。ビスケットや精米、即席めんなどでインドネシア国内の高いシェア(市場占有率)をもつという。2013年の売上高は3億9020万ドル、純利益は3330万ドル、総資産4億1310万ドルという。ベトナムとマレーシアの食品生産会社に8000万ドルを投資する計画で、今回、ハノイミルクに注目した。

一方のハノイミルクは、昨年の売上高は2220億ドンで、2013年比5%減とわずかな減少にとどまったが、純利益を2013年の30億ドンから昨年は1億6100万ドンにまで大きく落とした。また、同社の1株当たりの利益も、わずか13ドンと低迷している。同社は2001年に創立され、一時はベトナムの乳業会社としては3本の指に入る存在だったが、ビジネス戦略の失敗のほか、約7年前にメラミン混入の事件があったことが経営に悪影響を及ぼしていた。

このため、同社は売り上げの減少による資本不足に。商品の品質改善が行き詰まったり、メ・リン地区で2000頭の乳牛を飼育する自社牧場(3800億ドン相当)の開発投資資金が不足する事態となっていた。

ティガ・ピラーの傘下に入ることによって、ASEAN経済協力体が今年の年末に実現したさいには、ベトナム以外にも加盟10カ国との交易が活性化することになり、ハノイミルクにとっては大きなビジネスチャンスが生まれる期待が高まる。VPバンク証券のバリー・ワイズブラット調査部長は、「ティガ・ピラー社は、ハノイミルクの製品をインドネシア国内で販売することで、ハノイミルクの年間利益に1880~2350万ドル上乗せできるだろう」と分析した。

ベトナム最大級の投資ファンドであるVOF(ビナキャピタル)の市場調査によると、ベトナム人一人あたりの年間平均牛乳消費量は14リットルで、まだ、ASEAN地域の平均消費量の約半分に過ぎない。そのため国内の乳業市場拡大が期待される一方、ASEAN地域への輸出にも注目が集まっている。

ベトナムの乳業業界では昨年、VOF(本社・ホーチミン市)と日本の大和PIパートナーズは、共同で乳製品製造販売会社のインターナショナル乳業(IDP)の発行済株式の70%を取得。これにより、IDPは、今年は50%、来年以降3年間は25%の売上高増をねらう。また、ベトナム国内の乳業―メーカーであるTHミルクもダラトミルクを買収し、自社の酪農場拡大を図っている。今回のハノイミルクの買収話で、国内外の乳業会社による競争が過熱しそうだ。