トヨタが生産から撤退検討 2018年の関税撤廃問題

ASEAN(東南アジア諸国連合)加盟国内の関税撤廃が2018年に迫るなか、世界最大の自動車メーカー、トヨタがベトナムでの生産撤退を検討していることが明らかになり、波紋を呼んでいる。関税撤廃となれば、ベトナムで製造するより、タイやインドネシアなどの近隣国で生産した完成車を輸入する方が安上がりになることなどが理由だ。ベトナムで自動車の製造を続けるには、何らかの政府の支援措置が必要だ、との声が業界で高まっている。

トヨタの現地法人、トヨタ・モーター・ベトナム(TMV)の丸田善久社長は今月2日、会社の運営方針を報告する会議の席上、関税撤廃後はベトナムでの現地生産をやめ、他のASEAN加盟国から完成車を輸入する可能性について言及した。

東南アジアの国々で車を製造する際、TMVは、ほとんどのスペアパーツを輸入しなければならない。今の制度のままであれば、関税撤廃後、ベトナムで製造するよりタイで製造した完成車をベトナムに輸入した方が安くなるという。

ベトナム自動車工業会(VAMA)会長も務める丸田社長は、「2018年問題は、自動車メーカーにとって、大きな課題」と語る。現在、TMVでは24席以下の乗用車の40%の部品を、他のASEAN加盟国で製造された製品の輸入に頼っている。輸入には、ベトナムの国内産業保護などのため、50%という高い関税率が課されている。これがベトナム国内での自動車の高価格の背景の一つだ。それが、ASEAN自由貿易協定(AFTA)の物品貿易に関する協定(ATIGA)のもと、2018年に関税が撤廃されると、「国内生産するより、輸入車を販売する方がもうかるようになる」と業界関係者は打ち明ける。

昨年、ベトナム政府は、自動車産業における2015~2020年の計画を承認した。が、そこには業界が期待するような政策は何も記されていなかった。丸田社長は、「これでは、今後、われわれがどうすればいいかわからない」と訴える。

ベトナムで自動車を製造すべきか、やめるべきか─。自動車メーカーは政府の次の一手を待ちわびている。丸田社長は、「政府の支援がなければ、自動車メーカーは確実に行き詰る」と話す。

4月2日に発表された最新の数字によると、2014年のTMVの自動車販売台数は、前年比24%増の4万1205台となった。この数字はVAMA加盟社の31%に相当する。TMVの動向は国内外から注目されている。

こうしたなか、トヨタ自動車グループは2018年、1300万ドルを投資して中国に新工場を建設しようと計画、その翌年にはメキシコにも進出する計画である、とAFP通信や日本国内のメディアが相次いで報じている。