ベトナムの観光業、国際統合の先駆者としての期待と懸念

ASEAN経済共同体(AEC)の昨年末の発足を受け、東南アジア地域は2016-2025年にかけて観光客を世界各地から誘致し、観光の収入増を目指す。ベトナムも観光の開発と前進に尽力する考えで期待が高まる一方、業界内には懸念もあるようだ。

新たな機会を開拓
2015年の経済成長の鈍化などさまざまなマイナス要因にもかかわらず、ベトナムの観光分野は前年比0.9%増の800万人近い外国人観光客の受け入れを達成し、さまざまな目覚ましい成果を残した。昨年、世界のもっとも魅力的な旅行先に選ばれた20カ国のなかで、アジアからは5カ国がランクインしたが、ベトナムもそのうちの1カ国となったことなどもその一つだ。国際統合を深めるという視点から見ても、ベトナムの観光産業にとって大きな推進力になると考えられている。

AECの設立を受けて、ベトナムは今年、世界各国から、特に6億人の人口を抱えるASEAN諸国から、さらに多くの観光客を誘致することを目指す方針だ。AECの設立で共同体加盟各国が観光発展で一致協力することは、ベトナムの自国観光の世界的PRの一助となると期待される。

さらに、共同体は新たな投資機会、労働者や文化の流入、そして近隣各国との競争などによって、ベトナム国内の観光分野においても刺激や発展の推進力となるだろう。

ベトナム観光総局(VNAT)のハー・ヴァン・シュー副総局長は、「観光は東南アジア地域の、そして世界規模でベトナムの国際統合をけん引する先駆者的な要因と考えられており、前途にはチャンスも多い」と期待を示す。その一方で、ベトナムの観光がタイやシンガポール、マレーシア、インドネシアといった近隣各国に比べまだ脆弱である点を指摘し、「ベトナムの観光関連企業が近隣諸国のライバルたちに圧倒される可能性も十分にある」と、AEC設立が両刃の剣であることを指摘する。

VNATのチャン・フー・クオン国際協力局副局長も、現在ベトナムの観光業界について、「働いている労働者の多くが、外国語能力やその他の技能、創造性などの面で、近隣各国の同業者に太刀打ちできない。また、優秀な人材は海外企業によるヘッドハンティングが行われるだろう」と警戒する。

統合に備えた対策を
ハイズオン省の観光促進センターのセンター長、コン・クオク・トゥアン氏は、このような状況を踏まえ、「政府は、国内の観光業界が国際統合の枠組みの中でも発展できるよう、政策決定やインセンティブの確立、労働者の教育訓練、業界支援や国際的なマーケティング展開など多方面から、観光業界をしっかりと支える必要がある」と注文する。

ベトナムの観光業界は東南アジア域内の、そして世界各国との統合に備えた準備はすでに始まっている。VNATのシュー副総局長は、「ベトナムの観光業界では、すでに対策に動き出している。労働力の質の向上、企業の競争力の強化などを図り、有能な人材には優遇措置を与えるなどして、業界を活性化していく」と語った。