ライチ出荷 最盛期迎え、米、豪への輸出増加 コスト高など課題も

ライチ収穫の最盛期を迎えたベトナムから、海外へのライチ輸出が始まった。産地のバック・ザン省では今年の収穫は13万トンと見込まれ、この約40%が輸出用だ。昨年から米国やオーストラリアで輸入が解禁されて輸出増加の期待がさら高まる一方で、高い輸送コストや品質管理の面などで課題も出ている。

写真㊤=米国向けに出荷された今年初のライチ
ホーチミン市の貿易会社、アイン・ズオン・サオは今月初め、米国市場に今シーズン初となるライチを輸出した。同社のファム・ゴック・トゥ社長によると、第一便で輸出されたライチは1トンで、ホーチミン市で害虫駆除のための放射線照射を実施してから輸出された。

輸出されたライチはすべてバクザン省ルックガン郡で、厳しい生産基準のもと作られたもので、「グローバル農業生産工程管理(グローバルGAP)」の認証を受けている。同社は2015年に初めて、米国向けにコンテナ2つ分のライチを輸出した。今年はシーズン中、最大約20トンを輸出する予定だという。

米国市場に進出するには、企業は輸入国の消費者の嗜好を理解しなければいけない。米国では、消費者が甘さを好むため、糖度が高い、色の赤いライチが人気だ。品質も、厳しい基準をクリアしていることが求められるため、ベトナムのライチを輸出するためのハードルは高い。

だが、専門家によると、米国、オーストラリア、日本や欧州各国など、高い品質を要求する市場に農産物を輸出することで、農家が厳しい基準に基づいて生産するようになり、農作物の輸出機会を拡大することにつながり、ライチ輸出の増加が期待される。

一方で、輸出企業はさまざまな課題にも直面している。

アメリカ、オーストラリアなどの市場が生ライチの輸入を解禁するまで、交渉が始まってから約10年かかった。2015年に輸出が始まったが、量は少なく、市場では安価な中国産やタイ産のライチと価格面で太刀打ちできなかった。

2015年にオーストラリアに輸出されたライチは32トン。市場での小売価格は1キロあたり15~22オーストラリアドル(25万~30万ドン/キロ)だった。米国では、1キロが8ドルの値をつけたが、中国のライチは1キロ2.5~3ドルだった。ベトナムのライチは中国産よりも品質が良く、味も良いのだが、値段が高いために消費者らの反応は鈍かった。

ベトナム産ライチの値段が高い原因は、主に輸送費と放射線照射費用にある。

北部のハイズオン省やバクザン省がベトナムでのライチの主な産地だが、最も困っているのが産地に近いハノイの放射線照射センターが、安全性の検査や認証を断ったことだ。そのため、輸出用の商品はホーチミン市まで運んで照射処理をしなくてはならず、輸送費用が高くなってしまうのだ。ベトナムでは輸送費そのものが高いこともあり、ライチの価格の3分の2を輸送費が占めることもネックとなっている。

ライチ輸出にかかわるホアン・ハー輸出会社は、ライチの鮮度を確保するためにベトナム航空を使用しているが、その費用が他の航空会社より高いと指摘する。

ライチ輸出会社の計算によると、ハノイで照射できると1トンあたり1500万ドン~1600万ドンのコスト削減になるという。北部で照射して輸送のコストと時間を短くできれば1キロあたりのコストは0.3米ドルになるのだが、南部で処理を行わなければならないために約2倍の1キロ約0.7ドルの費用がかかっている。

このような課題解決の第一歩として、ベトナム航空では現在、オーストラリア行き直行便でのライチ輸送費を約30%引き下げることを検討している。