安心安全な食物をハノイの食卓へ 生産者と流通が販路拡大で協力へ

ベトナムでは最近、野菜や果物など食べ物の安全性に人々の注目が高まっている。その流れを受けて、ハノイでは生産者と小売業者が連携できるような好条件や投資支援策などを用意し、安全な農産物が消費者のもとに届けられる仕組みを確立しようという動きが強まっている。

写真㊤ 安全性のアピールと販路を拡大のために、ヴァンナム農業協同組合では組合員が栽培した野菜や果物を販売している=ハノイ

連携を強化
消費者が求めているにもかかわらず安全性の高い食品が流通しにくいのには、「商品に市場での競争力がない」「継続的に商品供給ができない」といった生産者側の課題もあるが、最大のネックとなっているのは「流通販路を探しても、小売店との直接の接点が見つけられない」ことだった。

ハノイでは、安全性の高い農作物などの流通チェーン開拓に力を入れており、ようやく野菜で11、畜産品で21の流通チェーンが確立された。しかし、まだ成果が見えてくるのはこれからだ。

ハノイ郊外フックトー郡のタイン・ダー地区人民委員会のグエン・バン・マイン委員長は、「タイン・ダーは最盛期には1日8~10トンの野菜を出荷している。地元当局が厳格に監視と審査をしており、同地区の農産品は安全性でも、品質面でも国の基準を越える」と胸を張る。だが、せっかくの安全性の高い野菜も、スーパーマーケットや小売専門店などへの独自の販売ルートが確立されていないために、ほとんどが他地区の野菜と同じような扱いで卸売店に薄利で売られているというのが現状だ。「タイン・ダーの野菜は安心・安全の産地証明があるにもかかわらずそれが生かし切れていない。(現状の流通システムでは)そのブランド名は市場に広がらない」と悩む。

他にも課題はある。フックトーのトーロック第5地区で養豚業を営むグエン・フン・ティンさんは、バイオ農法を活用した手法で繁殖を行っている。環境にも優しいうえ、品質の高い肉がとれるので、通常農法よりも利点は多いとティンさんは言う。しかし、通常農法の場合は畜産農家が飼料を分割で支払える制度があるのに、バイオ農法の場合は飼料代の分割が認められず、コストが通常よりも割高になってしまうという。安心安全な食物を人々の食卓に届けるためにも、安全性につながる最先端の技術導入への、支援策の用意や、農家がそれを採用するためのインセンティブを設ける必要がある。

より近い協力体制へ
首都圏や大都市などでは、自社の流通網に乗せて販売することで安全な農産品を作る生産者たちを支援しようというスーパーマーケットや流通企業の動きがみられる。ハノイでは先日、安全性の高い農産物を手掛ける生産者と、流通業者による商談会が行われた。

量販店「フィヴィマート(Fivimart)」を展開するニャット・ナム社は、自社の店舗で販売する野菜や果物、海産物や畜産品などの安定供給のため、生産者と手を組みたいと考えている。商談会に参加した同社のブー・チー・ハウ副局長作物は、製品の安全性や衛生基準に関しては、野菜などの原産地証明取得、肉類の場合は現代的な食肉処理方法を採用していることの証明取得といった厳しい条件を挙げたが、生産者らの関心は高かった。

この商談会で、ハノイ市の農業・農村開発局のグエン・フイ・ダン副局長は、「生産者側は完全な製品チェーンを確立し、安全性の高い食物生産工程に従うこと、禁止薬剤や原料などを使わないことなどが重要だ」と強調した。ハノイ市では、小売店に並ぶ安心安全な食品の品ぞろえがより豊富になるように、生産者や小売販売店の間の関係強化に努めていく方針で、ダン副局長らは、そのための予算をハノイ農業貿易促進センターに求めた。

商談会では、安心安全な農作物を栽培・製造している生産者と販売店などとの間で、30件以上もの協力提携や契約が結ばれた。当局では、この動きが、ベトナムの農作物の安全性への信頼を、国内はもちろん、海外でも高めることにつながる第一歩になるとして、期待を寄せている。