日本の食品メーカー、ベトナム市場に熱視線

ベトナムの食品業界に参入しようと、日本の食品メーカーの関心が高まっている。市場が毎年約5%の成長をとげていることなどを理由に、ベトナムに熱視線を送っている。

ジェトロ(JETRO)ホーチミン事務所の滝本浩司所長によると、ベトナムの市場視察に訪れる日本の食品メーカーの数は、「年々増えている」という。「かつて日本はベトナムの製造業に焦点を当てていたが、最近では食品産業とサービス業への関心が高まってきている」と話す。

商工省の報告では、2011年から2016年にかけてベトナムの食品市場は毎年約5%ずつ成長してきたという。この高い成長率に海外企業、特に日本の食品メーカーが注目した。

ベトナムでは近年、日本の小売企業が多数進出。日本独特の食材や日本製の食品を広く流通させるための追い風となっている。また、ホーチミン市内だけでも日本食レストランが500店にものぼり、地場のスーパーマーケットにも日本製品専用の陳列棚が出来るなど、日本産の食品や日本の食材もベトナム人消費者になじみ深くなり、市場にも受け入れられると判断したのだ。

9000万人の市場を抱え、食品の安心や衛生への要求が高いベトナムは、日本企業にとっては将来性のある魅力的な市場だ。環太平洋経済連携協定(TPP)の発効を間近に控え、協定が参加国にもたらす恩恵を享受するためにも、より多くの日本企業が今後、ベトナムに進出すると予想される。

ゼリーなどのデザート類を製造する日本の食品メーカー、たらみの広報担当者は、「ベトナム訪問時に自社製品がイオンやファミリーマートなどの日系流通小売店で販売されているのを見て、感慨深かった」と話す。同社は今年1年間で約10万ドル相当の商品をベトナムに輸入する計画で、将来的にこの数量をもっと伸ばしたい考えだ。

即席めんなどを製造する五十嵐製麺(福島県喜多方市)の五十嵐隆社長は「ベトナムの消費者は、健康を意識した商品を好む傾向がある」と分析。同社の製品はイオンやファミリーマートなどの日系スーパーやコンビニエンスストアを通じてベトナムの消費者に紹介されており、「手応えを感じている」という。また、茨城県のある畜産会社は、ベトナム国内の3つの小売店に日本産の牛肉を輸出しており、今後スーパーマーケットへの販路拡大を計画中だ。

ジェトロの滝本所長は「ジェトロでは、日本とベトナムの企業を結びつけるためのさまざまなプログラムを企画し、ベトナム人の嗜好やベトナム流の商取引など、ベトナム市場についてのさまざまな情報を日本側に提供してきた」と話す。今後は、ベトナム市場で日本企業が商品を販売するまでの手続きを迅速化したいと考えている。