ベトナムのコーヒー輸出 大きな飛躍

干ばつによる被害にもかかわらず、2015-2016年のコーヒー収穫期に、ベトナムのコーヒー輸出業界は驚くべき成果を遂げた。世界的なコーヒー輸出大国となったが、その地位を維持するため、業界では設備投資に加え、加工技術や生産品種を工夫するなど、さらに努力を重ねている。

ベトナム・コーヒー・ココア協会(Vicofa) によると、2015-2016年のコーヒー収穫期(2015年10月1日~2016年9月30日)の1年間で、ベトナムのコーヒー輸出量は約175万トン、輸出額は31億6000万ドルに達したという。前年度は約134万トン、収入が約26億7000万ドルであったため、これと比べると輸出量が34.8%増、輸出額が17.2%増。昨年度のベトナムのコーヒー産出量は過去3年間でもっとも多く、干ばつの被害などにもかかわらず、ベトナムはコーヒー輸出世界第2位にとどまることに成功した。

ベトナム産コーヒーの輸入では、ドイツとアメリカが2大輸入国で、それぞれベトナムのコーヒー総輸出額の15.4%と13.2%を占める。これにイタリア、スペイン、日本が続く。2016年4月以降、コーヒー価格は上昇を続けており、コーヒー加工業者らは農家から1キロあたり約4万6000ドンでコーヒーを買い付けている。これは、過去5年間で最も高い価格だという。

Vicofaのルオン・バン・トゥ会長によると、2015-2016年の収穫期に、ベトナムは加工コーヒー8万6500トン(前期比28.4%増)を輸出。輸出金額にすると約3億2500万ドル(同10.3%増)だった。

ヒュイ・フン・コーヒー社のダオ・ズイ・ツン副社長によると、ここ数年コーヒーの価格が値上がり傾向にあり、ベトナムのコーヒー輸出業に恩恵をもたらしているという。2016年に同社は1万トンのコーヒーを、主にEU諸国やアメリカに輸出。通常のコーヒーは1トン当たり約2000ドルで取引されるが、農産物生産国の労働条件や環境保護などの基準を満たした農産物加工品にのみ与えられる国際フェアトレードラベル機構(FLO)の「国際フェアトレード認証商品」であれば、その価格は1トン2700ドルで取引されるという。同社ではこの認証を得られるコーヒー生産を増やす計画で、「2017年の収穫期には1万2000トンを輸出し、より高値で買ってもらえる努力をしたい」と話す。

商品をより多様化
ベトナムのコーヒーの輸出総量の約30%にかかわるインティメックス・グループのド・ハ・ナム社長は、2015-2016年の収穫期の輸出量が増加したのは、2014-2015年の収穫期のコーヒー価格下落で、生産農家や輸出業者が豆の販売量を減らし、在庫として抱えていたものを今期売りに出したためだと説明する。

また、世界の他のコーヒー生産地域で2015-2016年の収穫が悪かったため、インスタントコーヒーなどに使われるロブスタ種の約60%をベトナム産の豆が占めるという結果になった。

好条件に恵まれた昨シーズンに対して、2016-2017年のコーヒー産出量は全期から約20%減少し、約130万トンにとどまる見通しだ。その一因が、過去20年で最も強大で、期間も長いエルニーニョ現象の悪影響だ。さらに、前年の輸出増により、コーヒー農家らは在庫が底をついている状態だ。このような状態を危惧し、農業農村開発省と各地の地方行政当局は、エルニーニョ現象に対応するために、ベトナムは生産するコーヒーの品種を多様化させ、高度な加工で製品に付加価値を与えなければ、世界市場で現在の地位を維持できないと指摘した。

ベトナム農業農村開発省傘下の農林水産加工・貿易・塩製造局のヴォ・タイン・ド副局長によると、同市省はコーヒー加工技術の深化を進めるよう指示を出しているという。計画では、2020年までにベトナムで生産されたコーヒー豆の約25%は国内で加工し、毎年約25万5000トンのインスタントコーヒーとして海外に輸出することを目指す。さらに、2030年には、インスタントコーヒーの生産を年間約35万トンにまで増やす。加工技術を高めることによって、約10億ドルの付加価値が生まれると試算されており、2020年までには輸出額を38億~42億ドルまで増やす考えだ。

ヒュイ・フン・コーヒー社のツン副社長は、「ベトナムが世界でも有数のコーヒー輸出国になっているにもかかわらず、世界の顧客はまだベトナム産のコーヒーについて知識が浅い」と嘆く。このため、コーヒー生豆を輸出するだけではなく、同社では近年、豆をインスタントコーヒーに加工して販売しているほか、ドリップ用コーヒーのフィルターなども、「ダック・マーク」というブランド名で輸出している。

コーヒーの加工設備に投資する企業も増えている。例えば、スイスのネスレ・グループは、ベトナム国内に約8000万ドルを投資してカフェインレスコーヒーの製造プラントを新設した。また、ドイツのノイマン・コーヒーも、ドンナイ省に1時間あたり約26トンものコーヒーを加工できる加工工場を開業した。ビンズオン省には、マッシモ・ザネッティ・ビバレッジ・グループが、年間加工量が3000トンにも及ぶ工場を、また、インティメックス・グループも年間加工量9万トンとなる大規模加工施設を完成させている。

Vicofaによると、コーヒーの輸出において、コーヒー加工品は数量では4%を占めるにとどまるが、輸出金額で見ると10%に達するという。EU(欧州連合)やカザフスタンなどのユーラシア経済連合(EEU)、韓国などとの自由貿易協定(FTA)締結により、ベトナムで加工されたコーヒーの輸出は、0~5%の低い関税率にとどめられている。これらの条件は、ベトナムのコーヒー業界に大きなビジネスチャンスをもたらすと期待できる。