チュオンハイ自動車工場火災で1100万ドルの損失

ベトナムの自動車生産・組み立て大手、チュオンハイ自動車(Thaco)のバスの組み立て工場(クアンナム省)で今月2日、大規模な火災が発生した。この影響で工場内部に保管していた部品や組み立て用部材などが延焼、その損害は2500億ドン(約1100万ドル)に及ぶと、同社のチャン・バ・ズオン会長が会見で明らかにした。

写真㊤=チュオンライ自動車中―ライ工場のバス組み立てライン(火災前に撮影)

火災は今月2日、クアンナム省ヌイタイン県のチューライ自動車工業区内にある「チュオンハイ自動車チューライ工場」で、就業時間後の午後6時ごろに発生。約5000平方メートルに延焼し、約3時間燃え続けた。ズオン会長は火災の原因が、電気回線のショートによるものと推定される、と説明。工場内に保管されていた自動車の車体や組み立て部品などに被害が及んだという。

火災の発生で、工場に勤務する労働者約1000人のほか、クアンナム省や、隣接するクアンガイ省や、ダナン市の消防や軍が消火にあたったほか、近隣のチューライ空港の職員らも駆け付け、工場から部品などを運び出す手助けをしたという。出火原因の捜査や、一時的な補修工事が終了した19日、工場はようやく操業を再開した。

ズオン会長は、「工場の自動消火設備の及ばない場所で火災が発生したために、消火に手間取った」などと説明した。

被害が拡大したもう一つの原因が、「大口の受注に備えて、新しい製造ラインがまだ建設中だったにもかかわらず、大量の組み立て部品や内装材などを大量に準備し、保管していたことだった」とズオン会長は述べた。

チュオンハイ自動車は、ホーチミン市に本拠地を置く開発投資銀行と、ダナンのPVI銀行の2行と、計6,388億ドル(2億8,200万米ドル)の保険契約を結んでいる。開発投資銀行は、ベトナム国際調整官(VIA)の独立した部門に、被害の評価と見積もりを依頼しているという。

会見にはクアンナム省のディン・ヴァン・トゥ人民委員長も出席し、「今回の火災は、チュオンハイ自動車にとってだけではなく、一帯の工業地域に立地するすべての工場や企業にとって、防火を再考させる契機となった」と警鐘を鳴らした。トゥ委員長によると、火災の発生で、製品のバスの納品が3~7日遅れとなったという。また、火災に関する調査を迅速に行い、企業の事業再スタートを支援するよう、グエン・スアン・フック首相からは要請があったという。

火災があった組み立て工場は、チュオンハイ自動車が4億ドルを投資して整備した「チューライ・チュオンハイ工業複合施設」にあった。同施設の敷地内には、同社の物流拠点や自動車製造工場、職業訓練学校、さらには港湾や完成自動車の保管施設、船便による輸送システムなどが完備されている。同社はさらに、3カ所の拠点開発を計画中で、実現すれば年間約21まん5000台のトラックやバン、商業用自動車などの製造が可能となる。また、部品などの現地調達率も、現在の16%から46%にまで引き上げることができるという。

チュオンハイ自動車はベトナム最大の自動車製造・組み立て企業で、韓国のキア自動車、日本のマツダやフランスのプジョーなどの組み立てを行っている。製品はラオスやカンボジア、ミャンマー、コロンビアなどに輸出されている。

昨年の売上高は前年比約40%増の65兆ドン(約280億ドル)。ベトナムに約18兆ドン(約7億9600万ドル)の国庫収入をもたらした。今年は、ベトナムのGDPの2%に相当する約71兆ドン(約310億ドル)の売上高を目標としていたが、今回の火災の影響がどう響くか、懸念されている。