ベトナムの日系企業好調、66%が拡大検討 JETROが調査

日本貿易振興機構(JETRO)が日系企業を対象に実施したアンケートによると、日系企業はベトナムを「アジアにおける魅力的な進出先」ととらえており、ベトナムで営業する日系企業の66%がベトナムでの事業拡大を考えていることがわかった。

◇好調な日系企業の事業展開
これは、JETROがアジア・太平洋での日系企業の活動を調査した2016年版の「日系企業事業活動についてのアンケート」の結果で明らかになった。調査は2016年10月~11月に実施され、ベトナムでは、639社が協力した。

これによると日系企業の約66%は「ベトナムでの事業を拡大したい」と答えた。これは、フィリピン、インドネシア、タイ、マレーシア、中国よりも評価が高い数字だった。その理由の9割が、「ベトナムでの売上高が増加しているため」とされた。

JETROホーチミン事務所の滝本浩司所長によると、2017年には、日系企業がベトナムの消費財、小売、サービスの分野に投資を増やす傾向がみられるという。「これは、ベトナム企業にとっても、地元の嗜好や消費習慣に合った材料や製品などを展開するよい機会となる」と滝本所長はとらえている。

◇投資環境は大きく改善
アンケートで「投資環境」に関する項目では、「政治、経済の安定」がベトナムを選ぶ理由とされることが多く、ベトナムはアジア諸国14カ国のランキングで第4位だった。また、「国内市場の潜在的な成長性と安価な人材費」では第5位、「外国人(駐在員など)が快適に過ごす環境」では6位と上位に名を連ねた。一方で、「言語(外国語)」の項目では評価が低く、下位にとどまった。

また、JETROの分析によると、製造業における人件費が高騰していることが大きな懸念材料だという。ベトナムでの1人あたりの人件費は年間約4000ドルで、2010年に比べると2.2倍にはね上がっており、アンケートでも「人件費が高い」という解答が58.5%にのぼった。

「現地での原材料調達が難しい」(60%以上)「インフラ整備がまだ不十分」(44.4%)「体制や手続きが複雑」(41.8%)などの課題も指摘された。一般な経済リスクに関しては、2015年実施のアンケートに比べると懸念は著しく減少し、行政手続き、税金システム、法律などが「改善されている」と評価された。


ビンフック省フックイエンのトヨタの自動車組み立て工場

◇日系企業の6割は黒字
アンケートで企業の収益を尋ねたところ、ベトナムに進出した日系企業で「2016年に利益があった」と回答した企業は全体の約60%(2015年比4%増)だった。一方で赤字となった企業は25.1%(同1.1%増)だった。

また、売上高を増やすために「今後、業務を拡大する」と答えた企業は88%にのぼった。「ベトナムの成長の可能性と潜在能力」がその理由だった。

成長の課題として見られているのが裾野産業だ。34.9%の日系企業がベトナムは「裾野産業の発達が不十分」と不満を示した。一方で、経済連携協定(EPA)や自由貿易協定(FTA)の貿易条件を満たす企業は47.2%で、2015年より2.2%増加するなど改善もみられた。