海外ファッションブランド好調 ベトナム人の熱狂が拡大後押し

人気ファッション店へ行くと、長い行列を作って商品購入の順番を待つ人々。流行ブランドに向けられるベトナム人の視線は熱い。このような現象から、世界のさまざまなファッションブランドが、ハノイやホーチミンなどのベトナムの大都市への進出を加速させている。

流行の衣料品を大量生産によって手ごろな価格で提供する、いわゆる「ハイストリート・ファッション」と呼ばれる海外ブランドが、ベトナムで勢力を拡大している。スペインのザラ(Zara)やスウェーデンのH&M、日本のユニクロなどが、ベトナムの都会っ子たちの好むアパレルブランドだ。

かつて、ベトナム人がこれらの商品を手に入れたいと思えば、バンコクやシンガポールまで行って商品を購入するか、オンラインで注文し、商品を知人などに国境を越えて運んでもらうしかすべがなかった。現在では、ベトナムにこれらの店舗が開店したことにより、商品購入がぐっと身近なものとなった。

ザラがホーチミン市の大型商業施設、ビンコムセンターに初の店舗を開業したのは、昨年9月のことだ。好調な滑り出しに後押しされ、同社は今年4月にはベトナム国内でのオンライン通販を始めたほか、ハノイに2号店を出店する準備を進めている。


おおぜいの買い物客でにぎわうザラの1号店

H&Mも、ビンコムセンター・ドンコイに1号店を開業している。関係者によると、ハノイ市内のグエンチャイ通りやミンカイ通りなどの商業施設に、それぞれ店舗を開設予定だという。

英国に本拠地を置くトップショップ(Topshop)とトップマン(Topman)は、ベトナム国内ですでに4店舗を展開中。スペインのマンゴー(Mango)はハノイにもホーチミン市にも店舗をもち、女性向け商品だけでなく男性向けファッション展開している。

一方で、日本のファストファッションの代表格であるユニクロも、ベトナム店開業に向けて最後の準備に追われているという。

ファッション関係者によると、現在ベトナムで展開する国際ブランドは約200。市場全体の売上高の約60%を占めている。
このような国際的に知名度の高いファッションブランドが存在感を増し、昨今、ベトナムは「新興ファッションの楽園」と呼ばれているという。ニールセン社が58カ国の2万9000人を対象に行った調査では、調査対象となったベトナム人の56%が「ブランド品のためなら高額を支払ってもいい」と回答。「ブランド好き」のランキングでも、ベトナムは第3位となった。

ザラのベトナム現地法人によると、同社が進出先としてベトナムを選んだ理由として「ベトナム市場の可能性」を挙げた。「ベトナムは1人当たり購買力平価が高く、中流階級が増えており、ファッションにかける支出も右肩上がりだ」と分析する。海外有名ブランドをフランチャイズで展開するインドネシアの小売大手、ミトラ・アディプルカサは、ザラのベトナム誘致の立役者だ。同社は今後数年間で、ベトナムに設立した子会社を通じてザラの店舗数を拡大する一方、InditexやBerska、Massimo Duttiなどのブランドの店舗開設も計画しているという。

スウェーデンのH&Mも、同社成長のカギとなる5カ国の一つとしてベトナムを挙げる。2月には地元メディアが、ベトナムでのH&Mブランドマネジメントを担う幹部職員候補を探していることを伝え、話題を呼んだ。注目を集める海外のファッションブランドは、今後しばらくベトナムのファッション業界をにぎわせそうだ。