H&Mがホーチミンに1号店 海外アパレルブランド、ベトナムに続々進出

若年層が多いベトナムでは、ファッション市場が年間約20%も成長している。しかも、国内で製造される衣料品の80%は輸出用。そこに目をつけたのが海外のアパレル企業だ。先月初旬にH&Mが1号店をホーチミン市に出店するなど、ベトナム市場への進出が加速している。

ベトナム市場には、すでに約200の海外ファッションブランドが進出しており、現状では60%以上の市場シェアを占める。国内ブランドの製品は、残りの40%だけだ。

スウェーデンに本拠地を置くH&M(ヘネス・アンド・マウリッツ)が、ホーチミン市1区の大型商業施設、ビンコムセンター・ドンコイに「H&M1号店」をオープンしたのは先月9日。開業初日には、約1万2000人が、朝早くから夜まで行列し、このブランドの衣類を購入した=写真㊤

H&Mの東南アジアのマネージングディレクター、フレドリック・ファム氏は、ベトナムの人口が若く、経済成長が速いことを市場の魅力として挙げる。「ベトナムのファッション市場には、非常に高い潜在的な可能性がある。しかし、もっと重要なのは、ベトナムの人々のファッション意識が高く、また、多くの若者がファッションに興味を持っていることだ」という。

ブランドのベトナム参入のため、2年間にわたりベトナムのファッション動向を研究したファム氏は、ベトナムのファッション業界の活力を肌で感じた。「デザイナー、経営者、消費者などがそれぞれのファッションスタイルを持ち、ベトナムのファッションを多様にしている。これは、海外企業の経営方針に適合したものだ」と話す。

H&M1号店が入居したビンコムセンター・ドンコイには、ちょうど一年前の2016年9月、スペインのZARA(ザラ)がベトナム市場にデビューした。同店は、開業初日だけで売上高が約55億ドルを超える人気だった。これは同社の88カ国にある2000店舗で最高の売上記録となり、多くの企業を驚かせた。ZARAの販売エリア内では、忍耐強く服を待って支払いを待つ長い行列が今も絶えない。

そのほか米国のGAPやGAP傘下のオールド・ネイビー、スペインのマンゴー、米国の靴販売店のナインウエストなどが、ベトナム人が注目する人気海外ファッションブランドだ。

9000万人の人口を抱え、ベトナムのファッション市場は、毎年平均15~20%成長している。縫製は国の主要産業であるが、国内の衣類縫製会社は主に加工や輸出用のOEM(受注生産)に集中しており、これらの企業の2016年も売上高は230億ドルに達するなど好調だ。そのため、年間450億ドル規模で肥沃であるとの認識はあるものの、国内企業は国内の市場には目を向けていない。海外のファッション関連企業にとっては、目の前においしい〝ケーキ〟が差し出されているも同然だという。

ベトナムに進出した海外ブランドの展開手法も、さまざまだ。H&Mは9月初旬、華々しく市場にデビューした。一方、6月にホーチミン市で旗艦店を開業したオールド・ネイビー(Old Navy)=写真㊦=は、高級ブランド衣料や化粧品を販売するベトナム企業のIPP(アイメックス・パンパシフィックグループ)のパートナーとして事業を展開していく方針をとった。

このほか、日本のファストファッションのユニクロも、年内にホーチミン市に初出店する計画で、販売員を募集している。アメリカのForever 21も、2018年の年初ごろにベトナムに進出する。ZARAはホーチミン市の後、10月にはハノイに、次の店舗を開店する予定だ。H&Mは次の店舗の開始期間については具体的に公開していないが、今後2年間で出店を加速する考えだといい、今後も世界各地のファッションブランドのベトナム進出が続きそうだ。