ベトナムでも熱帯びる「ブラックフライデー」商戦 ネット通販の成長がけん引

大幅な割引価格と大掛かりな広告の投入で消費者に商品購入を喚起する米国の歳末商戦「ブラックフライデー」のセールが、今年はベトナムでも熱気を見せている。成長が著しいインターネット上での商品購入(Eコマース)が、消費関係のために盛り上げようと模索していることが一因のようだ。

米国で感謝祭後の11月第4週の金曜日を指す「ブラックフライデー」は、クリスマスなどに向けた年末商戦のスタートだ。売上の「黒」字化を願い、ブラックフライデーと呼ぶ。ベトナムでは、今年はインターネットなどの通販サイトを中心に、ブラックフライデー商戦の準備が進められ、11月初めからさまざまな割引や販促活動が展開されてきた。

東南アジアで展開する大手通販サイトのラザダ(Lazada)は、シンガポールを拠点に、マレーシア、タイ、フィリピン、インドネシアとベトナムで通販事業を展開。ベトナム国内では最大級のオンラインマーケット店だ。このラザダの年末商戦は従来、ハノイの季節の天候になぞらえ、「雨降りセール」と名付けて展開されていた。今年は、ブラックフライデーの企画として、11月24日から4日間にわたる特別セールを企画。初日3日間で昨年の約3倍にあたる143万点の商品が売れたという。

ベトナムではネット通販から火がついたブラックフライデー商戦は、今では店舗型の従来の小売り業態にも波及している。ビンコム・バーチュー・ショッピングセンター(ハノイ市)でのブラックフライデーセール=写真㊤=には大勢の市民らがかけつけた。だが、やはり顧客獲得の戦いが過熱しているのはやはり、ネット通販分野のようだ。Tiki.vnやAdayroi.com、Shopee.vn、Sendo.vnといったベトナムの有名通販サイトでは、家庭用品から生活雑貨、衣類など幅広い分野でセールを展開しているが、アパレル商品の売り上げがもっとも期待されるという。

◇背景に消費者行動の変化-より便利に
通販業界の成功は、ベトナム人々の消費行動の変化に大きく関連している。

ハノイ市に住むホアン・チー・マイさんは「同じ商品の販売価格の比較が簡単だし、商品を探してあちこち歩いて時間を無駄にせずに済む。だから、オンラインショッピングの方が好き」と話す。

通販業者の商品の品ぞろえを豊富にしたことや商品の品質の向上以外に、多くの通販会社が配送時間の短縮などの企業努力をしている。さらに、通販サイトのなかには、受け取った商品に満足がいかない場合の返品を認めている。これらの副次的なサービスも顧客を引き付ける大きな要因で、小売り業態に比べて通販が大きくリードしている部分だ。

商工省の通販デジタル経済局のレ・ズック・アイン氏によるとベトナムの通販会社の数は、2013年には1923社だけだったが、現在はその10倍にも増えたという。「通販ビジネスの展開には、メーカーや物流などさまざまな業界が大きくかかわっているため、競争は激しくなっている」と話す。

米国の調査会社、ニールセンによると、2016年のベトナムの通販売上高は40億ドルだった。現在の成長ぶりから推測すると、2020年には100億ドル規模に膨らみ、ベトナムの総小売り額の50%を占めるまでに成長すると見込まれている。

◇激しい競争
このようにベトナムの電子商取引分野の戦いが激しさを増すなか、今最も恩恵を受けているのは外国の通販企業だ。だが、業界大手であるラザダでさえ、「いつでも転換できるよう準備をしている」という。ベトナムの通販企業が新興し、急速に成長しているからだ。その一例であるShopee Vietnamは、購買者にとってだけでなく商品提供の企業にも利点の多い事業やサービスを展開し、この2年で急成長したベトナムの通販企業だ。同社のチャン・トゥアン・アイン財務部長は「今後も、消費者にも、商品の供給側にもメリットのある運営をしたい」と話す。

このような企業を視野に入れ、ラザダは、商品の価格をさらに引き下げる考えだ。また、これまでの混雑の緩和を図り、顧客の注文処理をスピードアップするため、ベトナム国内に4カ所の拠点設立を発表している。

ラザダとShopeeの激突に刺激され、他の地元通販会社や小売店も企業努力をし、市場のシェア拡大を目指して工夫を重ねている。例えば、Tiki.vnは、一部商品の50%割り引きや、11万1000ドンを越える商品購入で配達料無料、59万9000ドン以上の注文で2時以内の配達などの消費者向けサービスを計画。ブラックフライデー後も、ベトナムの通販、小売業の競争は沈静化することはなさそうだ。