競争が過熱、ベトナムのバイクタクシー

タクシー事業を展開するマイリン(Mai Linh)グループはこのほど、インターネットのアプリを使って利用者と契約運転手を結ぶバイクタクシーサービス、Mバイク(M.Bike)を開始した。ベトナムではすでに、米国発のウーバー・モト(UberMoto)やマレーシア発のグラブ・バイク(GrabBike)が同様のサービスを展開しており、従来型の業者を圧倒しつつある。国内勢の新規参入で“バイクタクシー戦争”はさらに過熱しそうだ。

写真㊤=ホーチミン市でサービスを始めたマイリン・グループのバイクタクシー、Mバイクの運転手

国内ではこれまでにも、ビブ・モト(VivuMoto)やティム・セー(Tim Xe)が一部地域で参入、一定の成功を収めている。今回の参入について、マイリン・グループのホ・フィ代表は、テレビのVTCニュースに対し「マイリンを含む従来のタクシー会社は、(インターネットのアプリを使った)ハイテク・タクシーとの競合という困難に直面している。しかし、損失を被ってばかりいるわけにはいかない。われわれも、より力強く発展しなければならない」と語った。Mバイクのアプリケーションソフトは、ベトナム人エンジニアが製作。iOSでもアンドロイドでも使用可能で、より完成度の高いものをめざし日々、改良中という。

サービス開始にあたり、マイリンは新規の自社バイク購入をせず、個々の運転手とビジネスパートナーとして契約。制服とヘルメットを貸与する。50歳以下で運転免許を有する人ならだれでも運転手になることは可能だが、2014年以前に生産されたバイクは使用できない。

各社とも料金に大きな差はない。Mバイクの料金は初乗り2㌔が1万1000ドン(約53円)で、以後1㌔ごとに3800ドン(約18円)。高級バイクを使用する「Mバイクプレミアム」は、初乗り2㌔が20000ドン(約98円)、以後1㌔ごとに7000ドン(約34円)かかる。

一方、グラブ・バイクは、ハノイ市内を例にとると、チャージ料金が11000ドン(約53円)で、初乗り2㌔が12000ドン(約58円)。チャージ料金は場所や時間帯、混雑状況に応じて変わる。ウーバー・モトは、チャージ料金が10000ドン(約49円)で、その後は1㌔ごとに3700ドン(約18円)がかかる。

マイリンは、パートナーになってくれる運転手を確保するため、会社の取り分を、他社の20~25%より条件のよい15%に設定。「後発のわれわれは、利用者の意見に注意深く耳を傾けていかなくてはならない」とフィ代表は話している。サービスはまず、ハノイとダナン、ホーチミン市の都市部で始め、成功すれば地方にも拡大していく。

今回の参入について、ハノイ運送協会のブイ・ダン・リエン会長は、ネットニュース、Sohuutritue( sohuutritue.net.vn)で、「多くの業者が市場に参入すれば、価格競争によって料金も下がり、利用者の利便性が上がる。今回の参入を協会は歓迎する」と評価した。

「マイリン・グループの参入は、バイクタクシー戦争に対するベトナム企業の反応の良さを証明したと言える。現在のところ、ウーバー・モトでさえグラブ・バイクにおされている状況だが、このままグラブ・バイクが市場を席捲し続けるのか、大いに関心がある」と今後の動向に注目。そのうえで「マイリンは、サービスや価格、宣伝といった面において、ウーバー・モトやグラブ・バイクをしのぐことが必要だ。その意味で、サービスを利用者に普及させるためのコミュニケーション戦略を持たなければならない」と提言している。