APEC域内経済成長の柱に「観光」 持続可能な発展を探る

先月、ベトナムのダナン市で開催されたアジア太平洋経済協力会議(APEC)で、21の参加国・地域の首脳らは、さまざまな分野での域内協力を約束した。なかでも観光は、APECの経済成長戦略の重要な要素として挙げられ、ダナン宣言にも盛り込まれた。

写真㊤=ベトナムの伝統刺繍を見学するAPEC関係者ら。会議ではこのような新しい観光資源発掘の必要性が指摘された

「新たなダイナミズムの創出と共通の未来の促進」をテーマに掲げたダナン宣言は、今年11月11日、第25回APEC首脳会議で採択されたが、域内の持続可能な経済成長の重要な要素として取り上げられたのが観光だった。「未開の地、都市から離れた農村などが、APECの経済発展や、人と人とのつながりをはぐくむ戦略になる」と指摘された。

ベトナム観光総局(VNAT)は、ダナン宣言に観光発展の分野での協力が盛り込まれた事実について、「持続可能なかたちで観光を発展させようというAPEC首脳らの決意を顕著に示している」と分析。ベトナムの観光業界は、宣言が6月にクアンニン省ハロン市で開かれ、2025年までに域内の観光客数を8億人と目標設定した「持続可能な観光開発に関するハイレベル会合」の結果が反映されたものとして、宣言を重要な成果と評価した。

統計でみると、APECの人口は世界の約39%、国内総生産(GDP)は世界の57%、貿易は49%を占める。ベトナムでも、APEC加盟の各国・地域はからの観光客は、全外国人観光客の80%を占めており、非常に重要な市場と見られている。

各国の外相や経済相が参加した11月8日の閣僚会議では、共同声明が採択され、2020年に向けたビジョンとして、4つの優先事項が強調された。声明では、6月のハイレベル会合の結果と、持続可能な観光の発展を進めるための協力体制を称えた。

具体的には、天然資源の保存や管理、生物多様性、エコシステム、文化遺産などについての対話と管理をより容易にし、観光発展分野における新たな技術の導入や文化交流などへとつながると期待されている。このような手法はAPEC域内の人々を結びつけ、農村部やへき地などの住民に対して社会的、経済的な統合をとるよう促すことに貢献するだろうとみる。

観光総局のグエン・バン・トゥアン局長は、APEC首脳陣らが、将来にわたって、社会、経済、財政の各方面の持続可能性質を確保した有用な観光プランを包括的に提案していると評価。観光業がAPEC各国の機会創出という独特の能力や、域内での観光業の発展によって包括的な成長を強化し、相互の連携を推し進めていることや、有名観光地の保全保護などで持続させる努力などが例として挙げられた。

世界観光気候(UNWTO)の予想では、アジア太平洋地域が2020年までに世界の全観光客の約27%を集めることになると予測している。