急成長する電子取引 ネットで変わるベトナム経済

携帯端末の普及に伴い、ベトナムでは端末を使ったモバイル決済やネット通販などのeコマース(電子商取引)が、2018年もさらに成長すると予想されている。

写真㊤=電子商取引の普及は宅配サービスの成長にもつながっている

ホーチミン市信用保証協会の調査によると、2017年の法人と個人のオンライン決済は、対前年比でそれぞれ47%と37%増加した。インターネットバンキングも、それぞれ13%、30%増加。携帯端末を利用したモバイルバンキングのサービスを利用した個人消費者数は36%増加、モバイルバンキングを通した取引件数は96%上昇した。

ITと金融サービスを融合したフィンテック業界の大手で電子決済サービス「Payoo(ペイウー)」を運営するベトユニオン(VietUnion)のゴ・チュン・リン総務部長は、「Payooは2017年、200種以上の支払いに対応できるようになり、大きく成長した。提携金融機関は30となり、国内6000カ所で利用できるようになった。今や年間の取引額は20億㌦(約2120億円)と見積もられている」と話す。

VISAのシーン・プレストン・ベトナム・カンボジア・ラオス支配人は「ベトナムのオンラインショッピング・チャンネルによる取引は2017年、135%増加し、インターネットのオンラインショッピングによる取引は61%増加した。平均取引額は42ドル(約4400円)で、航空券や旅行関連商品の人気が高い」と説明する。

ネット通販も急成長を遂げている。シンガポールに拠点を置く、「ショッピー(Shopee)」を運営するショッピー・ベトナム(Shopee Vietnam)のチャン・チュアン・アン常務は「ベトナム進出1年以上が経過し、55万業者が1000万以上の商品を提供している」と話す。

ネット通販のTiki.vnも2017年、消費者の動向を見込んで、配送サービスの充実を図るために多額の投資をしている。同社は2万9000ドン(約135円)という安価で2時間以内に荷物を届けるサービスを始め、配送前の荷物をさばく2カ所の倉庫を整備した。

ベトナムのほかインドネシア、マレーシア、シンガポール、タイ、フィリピンの6か国で事業を展開し、〝東南アジア版アマゾン〟とも呼ばれるネットショップ、ラザダ・ベトナム(Lazada Vietnam)もここ数年売り上げを伸ばしている。2017年、同社は物流システムに投資し、販売手数料を半額にすると発表した。

2018 年もさらに勢い


オンライン決済はあらゆる店舗で普及しつつある

ベトユニオンのリン総務部長は、2018年のベトナムはQRコードのブームになると予想している。QRコードの導入は、企業や消費者、金融機関に非常に大きな利益をもたらす、としている。

モバイル決済の普及は、eコマースの成長に拍車をかけることが期待されている。グーグルやシンガポール政府系ファンドのテマセク(Temasek)によると、2015年から2025年にかけてeコマースは年平均で33~35%の成長が予想され、投資価値も高いとみられている。

ラザダのアレクサンドル・ダーディCEO(最高経営責任者)は、「携帯端末とSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の普及によって、eコマースはさらに顕著な成長をみせるだろう。政府の支援があれば、国境を越えた海外との取引も拡大するだろう」と期待している。

ショッピー・ベトナのアン常務も「国民がよりオンラインショッピングに慣れさえすれば、もっと普及は進む。消費者が利用すれば利用するほど、配送や支払い、アフターサービスは充実することになる」と話している。