皮革製品や靴の製造業界は、毎年の平均成長率が15%と、順調に伸びてきた産業分野のひとつだ。いまやベトナム経済をけん引する主要産業だが、一方では、ライバル国の急成長や先端技術導入の遅れなど、さまざまな課題にも直面している。

◇高成長続く輸出
ベトナムの皮革製品・製靴業界は、2013~2016年にかけて記録的に高い成長となった。続く2017年も皮革製品・靴の輸出総額は180億ドルに達したが、このうち靴が147億ドルを占め、32億6000万ドルがバッグやスーツケース類などの輸出額だった。

いまや、100を超える国や地域に輸出されており、ベトナム製品の年間輸入額が毎年100万ドルを超える国が72カ国にのぼる。国別でみると、2017年は米国が最大の輸出先で、これに欧州連合(EU)と中国が続いた。

この分野の直接外国投資(FDI)も右肩上がりで、今ではこの業界の8割以上が海外資本によるという。

ベトナム革・靴・ハンドバッグ製造者協会(LEFASO)のグエン・ズック・トゥアン会長は、世界的な市場の需要を「増加傾向にある」と分析する。現在、世界の靴類の約70%がアジアで産出されており、その生産の主軸は中国、ベトナム、インドネシア、フィリピンとバングラデシュだ。業界では、2018年の輸出を195億~200億ドルと見込んでいる。

このように一見、順調そうに見えるベトナムの靴やハンドバッグ企業だが、実は4つの課題に直面している。上昇する労働賃金、進まないオートメーション化、海外諸国の保護貿易主義の台頭、そして海外諸国、特にミャンマーとバングラデシュの猛追だ。

◇生産性向上のために
これらの課題を乗り越え、新たなゴールを達成するために、業界は各国との自由貿易協定が生むビジネスチャンスを最大限生かす必要がある。2018年中にはベトナムは欧州自由貿易連合(EFTA)と自由貿易協定を締結する予定で、業界にとっては追い風になるとみられている。

一方、人工知能(AI)やビッグデータなどを応用した第4の産業革命も、ベトナムの労働と生産性に大きな変革を及ぼそうとしている。だが、Lefasoが行なった調査によると、革製品製造と製靴業の約75%の企業が、「生産自動化に投資したいが、困難に直面している」と、自動化が思うように進んでいない状況が浮き彫りになった。

このため専門家らは、さまざまな経済分野や企業が労働生産性を改革し、競争力を向上するために効果的な手段がとれるよう、労働生産性の現状を検証する機関の設立を国に求めている。

一方、Lefasoは自前の研究開発機関で、労働生産性の向上に向けた努力を続けている。例えば、企業に対して、人工知能を活用して経営判断を行うよう促し、現場のニーズに即した人材育成の実施などを目指している。

また、競争力をアップさせ、輸出を成長させるために、労働力が確保できる場所に工場を誘致する、周辺産業の発展に投資する、製品の付加価値を上げて粗悪品製造を無くしていく、などの業界の努力を求めていくという。