グラブタクシーがウーバーの東南アジア事業を買収 ベトナム企業参入や成長の好機に

米国のタクシー配車サービス大手、ウ―バーテクノロジーズ(Uber)がこのほど、地域事業をシンガポールのグラブタクシー(Grab)に売却し、東南アジアから撤退した。これを受けてベトナム交通安全委員会のクアート・ベト・フン副委員長は、「地元企業の参入の門戸が開かれる」と、期待を語った。

フン副委員長は、グラブタクシーによる企業買収を受けて、先週、ハノイで開かれたセミナー「ウーバーの買収:ベトナム企業参入の可能性」に登壇して語った。

ウーバーがベトナムに参入したのは、8年ほど前。それまでベトナムでは同種のサービスは知る人もおらず、グラブタクシーも無名だった。だが、両社とも短時間に急成長をとげた。首都ハノイでは、従来のタクシー会社の猛反発を受け、道路の混雑を悪化させるとの理由で当局が、ラッシュアワーの朝夕計6時間、主要な通りへのウーバーとグラブの車両乗り入れを禁じる事態にもなった。

「業界に全く見知らぬ〝巨人〟のような大手が新規参入すると、われわれは不安になる」と参入を振り返って分析したフン副委員長。今回のグラブによるウーバー買収については、「ベトナム企業にとって大きなビジネスチャンスを生むだろう」と期待を示した。

グラブタクシーは先日、ウーバーの東南アジア地域における事業譲渡が完了したと発表した。事業買収後、ウーバーはグラブタクシーの株式の27.5%を保有。同社のダラ・コスロシャヒ最高経営責任者(CEO)はグラブ社の経営陣に加わるとみられる。ウーバーは、自社の顧客に対して、「ベトナムでは4月8日に、ウーバーの全システムのグラブへの移行が完了した」とメールで報告し、新たにグラブタクシーの専用アプリをダウンロードするよう促した。

フン副委員長は、東南アジアにおけるグラブタクシーの成功について、「ベトナムを含む、東南アジア一帯の躍動的なビジネス環境の象徴だ」と紹介した。

「挑戦無くしてチャンスは生まれない。今、ベトナム企業にとってのチャンスがより明確になってきた。グラブタクシーの物語は、意欲があればベトナム企業も地元市場を開拓し、さらに海外へ進出できる可能性を示しており、おおいに励みとなる」とした。

ハノイ市タクシー協会のグエン・コン・フン会長によると、ウーバー、グラブ両社とも、ベトナム市場への参入前、ベトナム市場を徹底分析して国内法の抜け穴を探し、自社の利点を最大にする準備を行ったことが成功につながったと指摘した。

さらに、両社は市場での地位を固めるため、巨額の資本金も投入した。例えば顧客を引き付けるために大掛かりな割引キャンペーンなどを展開したが、このような手段は、高学の税金を納めなければならず、資本も小規模な地元のタクシー会社では対抗できなかったという。

ベトナム企業が手をこまねいてばかりいたわけではない。両社の参入直後から、ベトナムのタクシー会社もそれぞれ新技術を開発、導入し、それぞれが独自のタクシー配車アプリを構築していった。フン会長は「事業を革新し、競いあって高めていくことは、ベトナムの伝統的なタクシー事業の責任である」と認め、ハノイタクシー協会は、今後も平等で公平なビジネス環境のもとで、「サービスの質が顧客の評価の基準となるような状況を目指す」と強調した。

具体的には、協会として、加盟しているハノイのタクシー会社全社共通の配車予約センターを作る予定だという。現在、ソフトウェア会社がソフト制作にあたっており、「タクシー会社や価格などが一覧表示されるので、ハノイ市民のほか、地方、海外からハノイを訪れた人にとっても選びやすく、使い勝手のいい基盤となる」と自信を見せた。