ベトナムでは近年、無農薬や低農薬栽培された原材料などを使ったオーガニック食品の需要が高まっている。この傾向に市場拡大のきざしを見たヨーロッパの食品や飲料メーカーなど約40社が、このほど訪越。市場調査を行って販売チャンネルを開拓しており、自社製品のPR効果も期待しているという。

◇可能性秘めたベトナム市場
食品の安全性質に不安を抱き、化学物質などの添加のない、オーガニック食品を求めるベトナム人が増えている。収入の増加と生活水準の向上によって、このような食品が、贅沢品から手に届く商品へとなってきたことも一因だ。ベトナムオーガニック農産物協会によると、ベトナムのオーガニック食品消費は、年間約170万ユーロにのぼるという。

フランスのワインメーカー、シャトー・ド・マニシーのフロリアン・マチュー社長は、「ベトナムは広い農地や資源があるうえ、消費者の需要が高いこともあり、ここでオーガニック製品を開発や生産する余地は多いにある」と期待する。

エストニアの子ども向けオーガニック食品を製造するサルベスト社のジョナス・プーヴィ社長も、ベトナムのオーガニック食品市場の発展を確信する。「ベトナムの全人口の約5割以下が30歳以下で、ここ数十年は出生率が高まる傾向にある。ベトナムのオーガニック市場は、特にベビーフードや子供向け食品などの分野で、大きなポテンシャルを秘めている」と話す。

「GDPの成長もまた、ベビーフードなどを含めた食品全般で需要を高める要因となっており、ベトナムの顧客にサルベストの製品を売り込む好機となっている」とプーヴィ社長はみる。可処分所得も増えており、消費者は高品質の食品なら高い価格であっても支出をためらわない傾向がある。「そのような若い世帯の親たちは、教育水準も高く、さまざまな情報に基づいて子どもに与える食品を選択する」と同社では分析する。

◇欧州からの売り込み
在ベトナム欧州(EU)代表部のブルノ・アンジェレット大使は、食品の安全性がベトナム人にとって最大の関心事の一つであると指摘。「そういう人々に、ヨーロッパの食品や飲料の品質は保証できる」と胸をはる。

ホーチミン市で先月末に開かれた国際展示会「ユーロスフィア2018」では、新鮮な果物や野菜、牛や豚、鶏の肉など、加工乳、乳製品など幅広い食品が披露された。参加者らはベトナムの流通企業や輸出入業者、スーパーマーケットの社長らと面談したほか、ホテルやカフェ、レストランなどの恒久施設などへのアピールも続ける。

これまでに欧州各国から約100社の企業がベトナムへの肉の輸入に関する許可証を交付されている。ヨーロッパの安全な無農薬食品を扱う輸入業者で、ベトナムに投資したいと相談されるケースは多いという。

専門家らは、ベトナムに進出した欧州の食品メーカーらが存在感を増しており、安心安全な食品を手に取れる機会が増えていることは消費者にとっては利点になるとみる。一方で、ベトナム国内の食品・飲料メーカーは、厳しい競争に打ち勝つために製品の質を向上させる努力や工夫の必要があると指摘する。