依然、海外依存のベトナムの自動車産業 現地組み立てを増やす仕組み必要

自動車産業を、ベトナムの工業の牽引役として重要視するベトナム政府は、9席以下の小型乗用車の国内生産率を、2005年までに40%に、2010年までには60%まで、それぞれ引き上げることを目標としてきた。だが、ASEAN域内の輸入車関税引き下げで、 現地生産から完成車(CBU)の輸入が主流となり、現地組み立ての割合は7~10%にとどまっているのが現状だ。

◇難しい市場拡大
現状では、ベトナム国内で組み立てられる自動車生産数は年間46万台だという。その大部分を、9席以下の小型車(20万台)と、ワンボックスカー・ミニバン・乗用車(計21万5000台)が占める。

販売される自動車のうち、国内で組み立てられているのは、全体の7~10%に過ぎない。もっとも国内組み立て率が高いトヨタ・モーター・ベトナム(TMV)でも、まだ全体の37%だ。

商工省傘下の工業局は、ベトナムの自動車産業について、他のASEAN諸国と比較しても規模が小さいことを指摘する。

だが、ベトナム国民1人当たりの年間所得が2020年には3000ドルに達すると期待されるなか、ベトナムは2020~2025年ごろには、自動車保有が急速に伸びると予想される。2025年には60万台規模に膨らむと見込まれている。そのため、ベトナム国内の自動車産業が力をつけ、それまでに国内需要に見合う生産ができるようになれば、2025年には30億~70億ドル、さらに2030年には50億~120億ドルの自動車輸入支出を抑えることができるという。

自動車の部品製造でみれば、ベトナムは今のところ貿易黒字を維持している。だが、これらは大部分が近隣諸国での自動車組み立て用に輸出され、海外企業が市場を支配しているため、「輸出された部品が、海外で組み立てられ、完成車がベトナムに高値で輸入される」という構図が変わらない限り、貿易赤字は膨らみ、国内企業にとってのうまみも、ベトナムの産業活性化のメリットもない。

◇国内調達率の向上へ
今もっとも求められているのは、国内の自動車メーカーが、原材料や部品を現地で調達し、国内で組み立て率を高めるための効果的な解決策だ。そうすれば、ASEAN域内の自由貿易による税制優遇措置を享受でき、製品の競争力も大きく向上すると専門家らは指摘する。

ベトナム自動車工業会(VAMA)会長でもあるトヨタ・モーター・ベトナムの木下徹社長は、「トヨタは、ベトナム国内での部品の現地調達率や自動車の現地生産率を引き上げようと努力を続けている」と、自動車メーカー側の努力を強調する。例えば、TMVの戦略的モデルであるViosでは、従来は51の部品しか国内生産されたものがなかったのが、現在では3倍の151部品にまで増やしたという。「現時点では、33社の国内サプライヤーが400以上に及ぶ部品をTMVに供給しているが、このうち5社はベトナム企業だ」と話す。

同様に、ベトナムの自動車メーカー最大手、チュオンハイ自動車(THACO)は、自社の自動車組み立て製造工場の充実や新規建設に余念がない。これらの拠点では、トラックやバス、乗用車、特別車や農業機械などを生産する。

不動産や流通大手のビングループが設立し、新規の自動車産業への参入として期待されるビンファストも、国内の部品調達率を大きく引き上げる契機となりそうだ。車体のプレス加工や溶接など作業なども含めて、ほとんどの部品製造や組み立て工程をベトナム国内で行うことを目指しており、ベトナム発の国産自動車製造事業として注目される。

これらの試みを支え、ベトナムの自動車産業を発展させるためには、裾野産業の育成と促進が急務となりそうだ。