発展に期待と課題、ベトナム北部の水産物養殖業

ベトナム南部メコンデルタ地方などに比べると、知名度や注目が低いベトナム北部の水産業。だが、特に養殖の分野においては、大きな可能性を秘めていると専門家らは指摘する。輸出拡大などの期待も高まるなか、マーケティングの充実や投資資金の投入などが、課題となっているようだ。

ベトナム水産総局漁業局の幹部によると、ベトナム北東部、北西部とハノイ周辺の紅河デルタ各省の水産物養殖場面積は、22万4800ヘクタールにものぼるという。これは、ベトナム全国の漁業養殖の実に21.5%に相当する。

種類別に見ると、52.8%がエビの養殖場、4.3%がタニシや貝類の養殖で、残り42.9%はその他、となっており、北部で行なわれている養殖業の品種が多岐にわたることを示す。

北部の各省の沿岸部は、車えびなどの高級魚介類養殖に最適だ。また、北西部や北東部、紅河デルタ地域は、淡水魚、低い水温を好む水産などを、ダムや貯水湖などで養殖。国内市場向けに出荷するとともに、一部はすでに海外へも輸出している。

ただ、ベトナム北部での淡水湖漁業や養殖は、まだ小規模で散在しているため、組織的な対策ができずにいるのが現状だ。マーケティングの充実や投資の充実、科学技術の応用、稚魚育成から商品まで一貫した生産販売網の確立などが、求められている。

北部での養殖漁業の発展は、現状ではインフラ設備の不備や、小規模で一貫性のない生産、そして投資資金の不足といった課題に直面している。チャン・ディン・ルアン漁業総局副局長は、「政府は養殖設備の改善のための投資を早急に行ない、水産養殖プロジェクトには優先的に融資する道筋を作る必要がある」と話す。

水産養殖業関係者らは、養殖技術についての訓練を受け、養殖業への科学技術応用例などの事例を知る機会の提供が必要だと感じている。政府に対しては、貿易促進を活性化させると同時に貿易障壁を取り除き、国内の新規市場開拓への援助を求めている。

ベトナム漁業協会(VINAFIS)傘下の持続可能な水産業発展委員会のグエン・トゥ・クオン委員長は、「水産業のあらゆる生産段階で、安全性と管理が万全でなくてはならない」と課題のひとつとなっている安全性について話す。ベトナムはこれまでに12の自由貿易協定(FTA)に加盟しているが、それらはいずれも、衛生植物検疫措置(SPS)の徹底を求めるものであるからだ。「そのため、生産販売網の確立や適切な水産養殖手法の実践が、ベトナムにおける水産物養殖業の持続的な発展のためには不可欠だ」という。

ベトナム農業農村開省(MARD)傘下となる農業農村開発管理機構のチャン・ゴック・フン博士も、ベトナムの水産物養殖業について「競争力が高く、他国に比べて強みを持っているうえに、生産性においても、輸出の成長においても、発展の伸びしろが大きい」と評価。一方で、「今後は水産業界の生産流通網にかかわる財政上の政策を改善する必要がある」と指摘している。