海外市場を目指すベトナム茶、加工技術に課題

ベトナムは、茶の栽培や輸出に関して大きな潜在力を持っているが、一方で、茶の加工技術やブランディング、マーケティング、バリューチェーンのさらなる開発も求められている。

ハードルの低い市場へ輸出
ベトナムの茶の生産量は世界第7位であり、輸出量も第5位に位置する。12万4千ヘクタールの茶畑と500を超える加工処理施設があり、年間50万トン以上の乾燥茶を生産している。

農業・地方開発省の農産物加工・市場開発局の報告によると、今年7月の茶の輸出量は1万トン(1800万ドル相当)と推定される。また、今年に入ってからの7ヶ月間の輸出量は6万7千トン(1億900万ドル相当)であり、2017年の同期と比べて輸出量は12.9%の減少、輸出額も9.3%減少した。この7ヶ月間におけるベトナム茶の主な買い手は、パキスタン(2990万ドル、全体の32.8%)、台湾(1260万ドル、13.8%)、ロシア(1100万ドル、12.1%)、中国(720万ドル、7.9%)、インドネシア(440万ドル、4.8%)、米国(380万ドル、4.1%)だった。

トン・ビン・テクノロジー・トレード・デベロップメント社(Ton Vinh Technology and Trade Development Company Limited)のディレクター、チュー・スアン・アイ氏は、「新規事業では、主にロシアとアフガニスタンへ茶を輸出している。ベトナムの企業は、茶の味にこだわらない、ハードルの低い市場へ輸出するケースが多く、欧米のような目の肥えた市場にはアプローチできていない」と指摘する。

また、ベトナム茶協会の書記長、グエン・ティ・アイン・ホン氏は、「ベトナム茶の栽培面積は限られており、小さい茶加工施設が急激に増えて原材料を奪い合うことが、大規模な茶加工工場に困難をもたらしている」と言う。さらに、「ロシアで、ベトナム茶は中国茶より高い価格で販売されており、また消費者も中国茶よりベトナム茶を好むため、中国の貿易業者の中には、製品にベトナム茶のラベルを使用する者もいる」と明かす。

生産・加工チェーンの再構築を
商工省貿易研究所の前所長、グエン・バン・ナム氏は、「ベトナムにおける茶の保存技術や加工技術は依然、古いままである。企業は茶葉からタンニンを取り除くことはできるが、主には原材料もしくは輸入業者が精製した半加工品を輸出している」と述べた。さらに、「ベトナムは、長きにわたって大規模な国有の茶産業を維持してきた」と指摘し、「ベトナムは茶栽培に適した国だが、茶の加工や市場へのアプローチ、バリューチェーンの開発よりも、茶農園を重視してきた経緯がある」と続けた。

ナム氏は、農業・地方開発省が、輸出規則に基づいて、全体の茶生産や加工チェーンを再構築するための運営委員会を設置したことを示唆した。また、ベトナム茶製品の品質を世界市場の標準規格にまで高めるため、同省が解決策を考案するよう提案した。

一般に、ベトナム茶は海外市場で、同種の製品の60~70%の価格で販売されている。ベトナムの茶業界は、欧米市場で受け入れられるよう製品品質を高めていく必要がある。