ベトナムの材木業界、違法伐採に厳しい「NO」

ベトナムは、欧州連合(EU)との間で昨年交わした、「森林法の施行・ガバナンス・貿易に係る EUの行動計画」における自発的パートナーシップ協定(VPA/FLEGT)の批准を急いでいる。発効によって、違法材木の取り扱いに厳格な「NO」を突きつけなければならなくなるが、ベトナムの材木業界はどのような影響を受けるのだろうか。ベトナム材木・木工品協会(VIFORES)のグエン・トン・クイェン事務局長に聞いた。

まず、ベトナムとEU間のVPA/FLEGT実現に向けたロードマップはどうなっているのだろう。

ベトナムとEUは昨年10月、VPA/FLEGTの合意書に調印。EU側は、加盟各国の政府が批准に向けて動き出した。ベトナム側も同様に国内での批准を急いでおり、VPA批准後は、農業農村開発省が他の省庁や関連分野と連携して、実施に向けた青絵図を作っていく計画だ。合意は2021年に発効する予定という。

ベトナム側の懸案となっているのが、アフリカやカンボジアからの材木供給だ。特に、地理的な距離の近さは、カンボジアにとってベトナムへ木材を輸出するのに有利な条件となっている。ラオス政府がこのほど、ベトナムへの天然木材や丸太の輸出を禁止したが、それを契機に、カンボジア産の天然木材がベトナムの市場を席巻した。

クイェン事務局長は、これが「ベトナム国内の木材製品のイメージに悪影響を与えている」といい、協会としても、政府や農業農村開発省に現状の事態報告を行なっているという。

一方で、ベトナムがカンボジアからの材木輸入に関して不正確なデータを提出したとの、国際組織などによる指摘については、事実無根として一蹴した。

アフリカ諸国については、カンボジアと状況が違うようだ。アフリカのいくつかの国々は、それぞれの国自身がFLEGTとの自発的パートナーシップ協定を結ぼうとしているほか、多くは「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」(ワシントン条約=CITES)の加盟国でもある。これらの国々は材木を販売する際に、ワシントン条約に加え、国際的に森林管理の認証を行なうカナダの非政府組織、森林管理協議会(FSC)からの認証書類を提出している。

クイェン事務局長は、「そのような国々からであれば、ベトナム企業も、それらの国々からの材木輸入の合法性に確証を持つことができる」と話す。しかし、直接取引ではなく、仲介業者などを介した材木輸入の場合は、合法性に疑問が生じるとして、協会では国内企業に対して警鐘を鳴らしている。

懸念となっているカンボジアからの材木輸入を、うまく管理することは可能だろうか。

この点について、協会は2つの解決策を提示した。「ひとつは、カンボジアからの材木に対する輸入関税を引き上げること。もう一つの施策は、輸入を一時停止することだった」とクイェン事務局長は話す。

これを受けて、ベトナム商工省は先日「第3国への輸出を目的とした、ラオスとカンボジアからの丸太と材木の輸入」を、一時的に停止する政令を発効した。2018年の1~10月で、カンボジアからベトナムへの木材輸入額は前年同期と比べ53.2%減少した。だが、クイェン事務局長は「長期的な視点で見れば、この措置はベトナムにもカンボジア、ラオスにとっても利益をもたらすだろうと期待している」と語った。

ベトナムの材木や木材製品の輸出は大きく成長しており、基幹産業となりつつある。今月初旬には、欧州議会の関係者がベトナムを訪れ、農業農村開発省と、VPA/FLEGTに関する会談を持った。この協定の批准で、違法な森林伐採や木材採取の防止、森林法の遵守徹底が図られるうえ、欧州などへ輸出されるベトナム産木材の合法性が確認され、輸出が推進されると、両者の見方は一致している。