フィンテックに参入加速 法整備や人材育成が課題

金融とITを融合したフィンテックに参入する企業の増加が加速している。市場の拡大に向け、ベトナムでは、さまざまな環境整備が進められている。今後は、法的な枠組み作りや、高度な人材の育成が課題となりそうだ。

写真㊤=起業家のためのイベント「テックフェスト2018」では、フィンテックがテーマに取り上げられた

ビッグチャンスのベトナム市場
安定した経済成長の続くベトナムでは、電子決済を中心100社近くがフィンテック業界で起業し、26団体がベトナム国立銀行から免許を取得。また、16の銀行が3万カ所で利用できるQRコードを整備し、78行がオンラインによる決済を、41行がモバイル決済を始めている。

ベトナムを拠点にする人工知能プロダクト・コンサルティング開発会社、シナモンAIラブの堀田創CAIOは、「AI(人工知能)分野において、われわれは、シンガポールなど他の国より、ベトナムのベンチャーと組みたい」と話す。

ファンディング・ソサエティーの創業者、ケルビン・テオCEOは「(インターネット上で借り手と貸し手を結びつける融資仲介サービス)ソーシャルレンディング事業において、ベトナムは、シンガポールに次ぐ普及国になる可能性がある」と予想する。

困難を乗り越え
起業家にとって、まずベトナムで乗り越えなくてはならないハードルは、フィンテックをめぐる社会的な仕組みや施策だ。堀田氏はベトナムでは法的な枠組みの理解や手続きが大切だと強調する。一方、テオ氏は、省庁が複雑にまたがっているため、免許の取得が難しいという。

起業すると、今度は高度な人材確保の難しさに直面する。業界団体によると、フィンテック業界の60%が高い技能を持った人材の確保や求人に苦心している。

ベトナム国家大学ホーチミン市校工科大学情報技術学部のボ・ディン・ベイ学部長は、「ベトナムの企業は、人材の育成やトレーニングにあまり積極的ではなく、産学連携も限定的だ」と背景を説明する。

こうした課題の解決に向け、政府は近年、科学技術や工学、数学といった理系教育に力を入れている。また、ベトナム国立銀行は、フィンテックの普及に向けて、法的な枠組みの整備を進めようと委員会を立ち上げ、話し合いを続けている。