ベトナム商工会議所(VCCI)傘下の組織で、経済分析や企業への情報発信を行なう「世界貿易機構(WTO)と経済統合センター」が、「ベトナムのサービス産業部門における自由化」と題した報告書を発表。ベトナムのサービス部門は経済の中心的役割であるにもかかわらず、「発展が十分ではない」などと課題を指摘した。

写真㊤=観光はベトナムのサービス産業の中でも大きく発展した分野だ

この報告書では、同センターが展開したさまざまな調査を題材に、サービス部門の自由化がベトナム経済に与え得る影響を評価。ベトナム政府と国内企業、海外のサービス事業者などに、課題や解決策を提示している。

報告書によると、ベトナムのサービス産業は国内総生産(GDP)の約41%に相当し、他部門と比べても群を抜く第1位。この分野に産業の従事者は、過去10年間で急増しており、現在では全労働人口の約34%を占める。企業数も、製造や建設分野の企業数の2倍以上に達した。

だが、GDPに占めるサービス産業の割合は、海外の他の発展国ではその割合は50~70%にも達している。報告書は「世界の他の国々と比べて競争力は低い」と述べ、国際的な比較では、まだベトナムのサービス産業の発展に遅れがあることを示した。

もう一つ、課題として挙げられたのは、サービス産業内の「分野の偏り」だ。ベトナム国内のサービス産業には、多くの海外企業が投資し、プロジェクトを企画しているが、不動産業、ホテルとケータリング事業、卸売りと小売、自動車やバイクの修理事業などの分野に集中。生産分野向けのサービス業務が極端に少ないという構造の不均衡が見られるという。

サービス産業の中でも、「国際化によって飛躍的に発展し、ベトナムのGDP成長に大きく貢献した」とされたのが、観光分野だ。また、関連する交通や運輸、銀行業、ヘルスケアなどの部門も、雇用と収益を生み出しているとされた。
報告書は、サービス市場の自由化が、ベトナムの経済全体の発展に与えるインパクト、さらにサービス部門の各分野に与える影響について、今後さらに調査や評価を行なうよう推奨した。

また、ベトナムのサービス部門が競争力を磨き、国内の企業にサービスの品質向上を求める競争圧力となるため、「通信や公共交通、運送業、銀行業などを筆頭に、さらに多くの分野で市場開放が必要だ」と結論づけた。また、サービス市場を解放することにより、ベトナムの消費者が、海外企業が提供する質の高いサービスを受けられるようになるとも指摘した。