ベトナム商工省は今月5日から、中国のアルミ製品に対して、反ダンピング(不当廉売)課税を適用したと発表した。17社の製品が対象で、暫定的に実施。課される反ダンピング課税は、2.46%から、最大で35.58%となる。

対象となるのは、中国の17企業のアルミまたはアルミ合金の製品。棒や線材、番線、圧延材のなどさまざまな形状の製品が含まれる。輸入後にベトナム国内で表面加工を施したり、追加加工処理を行なったりする場合でも、課税の対象となる。

商工省は、世界貿易機構(WTO)の規約や、ベトナム国内の海外貿易管理法などに照らし、これまで約5カ月間、中国からのアルミ製品輸入を追跡調査してきた。ベトナムがこうむる不利益や、国内企業の損失などが分析された。

この結果、中国から廉価な商品が多数輸入されていることで、ベトナムのアルミニウム業界が深刻な打撃を受けいると判断した。すでに多くの雇用が削減されたほか、なかには操業停止に追い込まれた企業もあったという。

ベトナム国内のアルミメーカーのトップ4社である、オーストドア、ソンホン・アルミニウム、ツンヤン、ミエンファの4社が、2018年末に、商工省に申し立てを実施。この4社だけで、ベトナムのアルミ業界の売り上げの31.54%を占めることから、事態を重視した商工省が調査を行なっていた。

ベトナムの貿易管理法では、国内産業に重大な損害をもたらすと認められる場合、商工省が過去にさかのぼって輸入製品に対するダンピング防止のための関税適用を認めている。暫定的な反ダンピング課税の実施によって、商工省は「地元企業への負担を軽減し、違法な製品のベトナムへの流入を防ぐことができる」と主張していえる。

同省では、関係当局などと連携し、今後も監視と地元企業へのヒアリングを継続していく。調査は今年じゅうに終了する予定で、その後、これらの原材料を利用する金属加工企業なども含め、関連団体、組織などに総合評価を伝達する予定という。

また、国内の関連業者などに対しては、アルミなどの輸入契約や、原材料としての利用などにあたって、製品が反ダンピング課税の対象となる可能性を考慮するように促した。

輸入されたアルミやアルミ合金は、ベトナム国内で、ドアや防壁類、収納棚などに加工されているほか、内装や外装の装飾、建築素材としても利用されている。また、産業機械や構造体の製造などにも使われるなど、用途が幅広い。

昨年1年間で、中国からベトナムに輸入されたアルミニウム圧延材は、2017年と比べ倍増し、6万2000トンに達したとされる。この数字は、経済特区などの工業地区向けへの大量のアルミ輸入が除外されており、実際は、データの数量を上回る輸入があったとみられる。一方で、中国以外の国からのアルミ輸入は、昨年5000トンにまで減少。著しいアルミニウムの中国依存体質が浮き彫りとなっていた。