進まぬキャッシュレス決済 信頼感の醸成がかぎ

ベトナムの電子商取引(eコマース)市場は急成長を続け、今や80億㌦(約8500億円)規模に上っている。しかし、キャッシュレス決済は全体のわずか3~5%にとどまる。背景には消費者の習慣や、高まらないオンラインショッピングへの信用度があるようだ。

ベトナムの電子商取引は、地域最大の年間25~30%という速度で成長。ベトナムeコマース協会によると、国内で1日6万件以上の取引が行われている計算になる。

「しかし、キャッシュレス決済は、3~5%という非常に低い数字にとどまっている」と指摘するのは商工省の下部組織、ベトナムeコマース・デジタルエコノミー庁のグエン・チ・ミン・フェン副局長。「ベトナムでは、電子商取引をする人の80%程度が、現金着払いや代金引換払いといったキャッシュオンデリバリー(COD)を利用している」と実情を明かす。

世界銀行の統計によると、国民1人当たりの決済におけるキャッシュレス決済の割合は中国が26.1%、タイが59.7%、マレーシアが89%。ベトナム国立銀行(SBV)支払局のファム・ティエン・ズン・ディレクターは「世界の消費者が便利で近代的なキャッシュレス決済を求めているのに、ベトナムの消費者はいまだにキャッシュに固執している」と困惑する。その理由として、消費者と業者の相互不信を挙げる。多くのベトナム人はオンラインショッピングで購入した製品の品質を完全には信用しておらず、これがキャッシュレス決済を踏みとどまらせ、現物を見てからの現金支払する人が多くなっている理由と分析する。実際、多くの偽サイトが偽情報を流しており、消費者にオンラインショッピングへの不信感を抱かせている、という。

一方、ベトコム銀行のダオ・ミン・チュアン副頭取は「企業は新たな決済方法の導入に消極的だ。というのも、積極的な導入を促す政策や制度が不足している」と話す。

こうしたことから、フェン副局長は、政府としてもオンライン決済を増やすために、電子商取引の信頼度を高める制度づくりやさまざまなインフラ整備を進める必要があると指摘。具体的には、オンラインによる政府調達、オンラインによる公共サービスの提供などをすべきだとしている。