ベトナムでフードデリバリーの人気急上昇 多様な企業が参入で市場拡大

ベトナムでは最近、オンラインで注文し、自宅や職場などに料理などを配達してもらうフードデリバリーサービスの人気が急上昇している。多様な企業が参入して消費者にとっても利便性が増し、料理を提供する飲食店の売り上げ増につながっただけでなく、配達を担うドライバーや決済手法を提供する企業、金融機関など、さまざまな分野に経済効果が波及している。

ベトナムの市場調査会社、GCOMMが行なったアンケート調査では、回答を寄せた人の99%が、1カ月に2、3回、オンラインでフードデリバリーサービスを利用したという。同様のサービスを「週2、3回利用する」という人も、39%にのぼった。

ベトナムのフードデリバリーサービスの市場に潜在的な成長の余地を見た多くの企業が、ベトナム人利用者の嗜好や市場分析などにあわせて、さまざまなサービスの提供を始めている。

英国の市場調査会社、カンターが行なったアンケート調査では、ベトナムでもっとも頻繁に利用されているフードデリバリーサービスは「グラブ・フード(Grab Food)」で、回答者の81%が「利用したことがある」という。これに、「ナウ(Now)」と「ゴー・フード(Go Food)」が続いた。

さらに、韓国最大規模のデリバリー企業、「ウーワ・ブラザーズ(Woowa Brothers)」が最近、ベトナム市場に参入したことで、業界はますます活性化している。同社は今年2月、ホーチミン市で出前サービスを展開していた地場企業を買収し、韓国で展開しているフードデリバリーサービスの「配達の民族(Baemin)」の展開を始めると発表した。

このようなさまざまなサービスの増加や、出前が簡単に行なえる注文用アプリの登場などで、消費者の行動は大きく変化し、フードデリバリーの利用は消費者にとってこれまで以上に身近で気軽なものとなった。

アンケートに回答した一人、ホアン・トゥ・ロアンさんは、「サービスが発展したことで、地元の飲食店から好みの食事が注文でき、とても便利になった」と感想を述べた。多くの企業が魅力的な割引サービスを行なっていることも、「利用する動機になっている」と話す。

従来は自動車やバイクによるタクシー事業を展開していたグラブ・グループでは、「グラブフード」としてデリバリーサービスを始めて、自社のドライバーに運転手と料理の配送係を兼務させるようになった。客が乗車していない時間帯を有効活用でき、同社のドライバーたちは平均収入が23%アップしたという。

バイクタクシーの運転手だったグエン・チョン・リンさんは、料理のデリバリーをするようになって、「1日の収入は以前より15万~30万ドン増えた」と話す。

グラブフードに加盟した飲食店側も、参加から2、3カ月で「収入が以前と比べ300%増えた」と効果を語る。ハノイ市コウザイ区ファム・ チュアン・タイ通りにある「タイ・ビボ・デザート店」のオーナーは、「オンラインでデザート類の販売と配達サービスを導入したところ、売上高も顧客数も増えている」と喜ぶ。

出前で消費者が支払う一件あたりの単価は小額ではあるが、好況で取り扱い件数は爆発的に増加しており、支払いを扱う企業や金融機関も利益を享受している。

専門家らによると、ベトナムのフードデリバリー市場は今後も増加傾向にあるという。2020年には、市場が3800万ドル規模にまで成長する見込みだと期待されている。