外資依存のベトナム電子産業界 地場のすそ野産業育成に革新必要

ベトナムは電子機器輸出国として世界第12位、東南アジア諸国連合(ASEAN)では第3位にまで上り詰めた。だが、その輸出額の約95%は外国資本の企業によるものだ。ベトナム商工省は、この産業分野を真の地場産業に育て上げようと、部品の現地調達率の向上や、有望企業の成長育成などで外資依存からの脱却を支援する考えだ。

◇低い地場産業率
商工省傘下の産業局によると、ベトナムの電子産業は安定し、比較的高い成長率を維持している。 2019年の上半期には、携帯電話、洗濯機、エアコン、冷蔵庫などを含む675万点以上の製品が製造されており、前年同時期比29.2%増となった。

しかし、これらのエレクトロニクス・電子産業分野の企業は大部分が海外企業、多国籍企業だ。特に韓国と日本企業の進出が目覚ましい。ベトナムの主要な電子機器関連の工場や企業は、サムスン、LG、パナソニック、キヤノン、東芝、インテル、ユニデンなど、外国の大企業の投資で実現したものがほとんどだ。

このあおりを受けて、ベトナム生まれの電子機器メーカーは、かつての大手ブランド価値の劣化、市場占有率の低下などによって、成長が鈍化している。 ベトテル、BPhone、Vsmart、Tivi Asazoなどの勢いのあるメーカーであっても、残念ながら電子機器輸出額の5%しか生産できていない。

産業局は、「原材料や部品の現地調達率は5〜10%で、低すぎる」と課題を指摘した。ベトナムで製造されているといっても、電子機器類のほとんどが、形成済みのユニット(CBU)として輸入され、輸入部品を使って国内で完成品に組み立てるだけの製品なのだ。バリューチェーンに加わったといっても、電子機器業界のすそ野産業は、パッケージやプラスチック部品など、技術を要さない単純部品しか提供できていないのが現状で、「国内企業の生産技術や能力が不足し、製造品質が低いことが原因だ」と分析する。「国内サプライヤーと外資系企業との連携も依然として貧弱だ」という。

◇戦略的な業界育成へ
2014年にはわずか4社だったベトナムでのサムスンのサプライヤー数は、昨年は35社にまで増えた。パナソニックベトナムも、部品約10%が、4社のベトナム企業によって供給されている。キヤノンベトナムも、常に、地元で部品製造を委託できる企業を探し、アンテナを張っている。

国内のすそ野産業を発展させ、本格的にエレクトロニクス産業のサプライチェーンに参画する企業を増やすために、ベトナムに必要なのは、関税面や技術的な障壁を取り除き、不正輸出や違法な製造品などを許さない姿勢を見せることだ。また、家庭用電化製品などの国内市場向けの電子製品を保護するような対策を講じるとともに、有望なベトナム企業の成長を促し、産業を発展させる条件作りなど、革新的な対応が必要だ。

商工省は、日本、韓国の企業各社、世界銀行などとの国際協力プログラムを効率的に実施することによって、ベトナム企業が能力を向上させることができるよう、今後も引き続き支援していくとした。