ベトナムのフランチャイズビジネス 活況見せるも早急な法整備必要

今、国内外の企業やブランドが、個人消費が急成長するベトナムを、絶好のフランチャイズ市場と見越して熱い視線を送っている。ファストフードやファッションなどの分野で、ベトナムでも徐々に広がりを見せつつある事業形態だが、国内規制や法整備、さらに人材育成などは、その人気に追いついているとはいえないようだ。

◇活気づくベトナム市場
ベトナムでのフランチャイズ企業の歴史はそれほど古くない。2007年から2018年末までにかけて、ベトナムでは食品からファッション、コンビニエンスストアに至るまでのさまざまな分野で、フランチャイズ店を展開するためのライセンスが付与された外国企業213社。このなかには、マクドナルドやバスキンロビンス(米国)、ピザハット、バーガーキング(シンガポール)、ロッテリア、バーベキューチキン(韓国)、スウェンセン(マレーシア)、カレンミレン、ロンドンコースト(英国)、ブルガリ、モスキーノ、ロッシ(イタリア)など、世界的知名度を誇るブランドが名を連ねる、市場は活況を見せる。

国内企業も、それぞれの企業価値を向上させようと、市場に参入が始まった。チュングエン(Trung Nguyên)コーヒーはその先駆者的存在であり、全国にコーヒーショップをオープン。これに続いて、フォー専門のファストフード店「フォー24(Phở 24)」や飲食店「キンドー(Kinh Đô)ベーカリー」、衣料品小売りの「ニノマックス(Ninomaxx)」や「フォシ(Foci)」、さらに多角経営企業のT&Tやブージャン(Vu Giang)社などもフランチャイズビジネスに乗り出している。

このうち「フォー24」や、T&T社の子会社で靴やカバンなどの革製品を扱う「ズックチュー(Duc Trieu)」、さらにはブージャンが展開するコーヒー店「Bobby Brewers coffee」は、国内だけでなく海外でもフランチャイズの展開を始めている。

分野別にみると、ベトナムにおけるフランチャイズの主要分野はファストフードやレストランで、国内フランチャイズ市場の約41.31%を占める。家具とインテリア、化粧品、その他の消耗品が15.49%、ファッション関連が14.08%、教育や人材育成分野が11.47%をそれぞれ占めている。

最近の進出事例では、2018年に、マッサージ店「カラダファクトリー」を展開している日本企業、ファクトリージャパングループ(東京都)のほか、日用雑貨を扱うデンマークの「JYSK A/S」、ドイツ発祥のスポーツ用品「プーマ」などが、ベトナムでのフランチャイズ展開ライセンスを取得している。

ベトナムでフランチャイズ事業を統括する商工省傘下のベトナム商工政策戦略院によると、ベトナムのフランチャイズビジネスは急速に発展しており、国内のビジネス形態の多様化に貢献していると評価されている。

ベトナムでフランチャイズを展開する海外ブランドの数はこの3年間で大きく増える一方、ベトナムブランドの海外進出も目覚ましい。飲食、ファッション、小売りを中心に、ベトナムで展開するフランチャイズ店は200以上にのぼった。

◇運営面に課題も
海外からの進出企業は、直接提携した国内企業に独占的にブランド使用権利を与える方式でフランチャイズを展開している例がほとんどだ。事例は少ないが、ベトナム企業と提携し、そのベトナム企業が東アジアの発展途上国などでフランチャイズ事業者を募ることができる、いわば「2次フランチャイズ」を認めている企業も存在する。

活気づくフランチャイズ市場だが、その経営概念がそもそも存在しなかったベトナムでは、既存の法規制のもとでは、フランチャイズ事業の展開を管理当局に登録する必要がない。そのため事業活動を当局などが監視するのが難しいのが現状だ。 国内で提携する事業者のほとんどが、企業マネジメント能力に乏しい中小企業であることから、運営管理でトラブルに直面することも少なくないという。

強力なブランド価値をすでに有している場合は別だが、通常はフランチャイズ資格を得るには、企業が適切なマネジメントスキルなどを備えている必要がある。だが、現状ではまだ、ベトナム企業の管理はおろそかで自社ブランドの保護も不十分であるため、多くの海外企業がフランチャイズ展開に成功していないのが現状だ。問題は、フランチャイズ開発支援のための地元当局の政策欠如だ。フランチャイズ関連の法的文書の重複や矛盾も、ブランド管理や紛争解決を難しくしている。さらにこの分野の法律や規制のほとんどが、フランチャイズの本部側についてで、紛争や知的財産権に直接関与するフランチャイジー側の権利義務規定がおろそかになっていることも課題だ。

フランチャイズ本部側の企業も、自社ブランドの強化や保護に十分な注意を払っていないケースが多い。国内企業は、財務面だけでなく、技術や人材資源も乏しく、フランチャイズ展開に見合うブランド力をもつ店舗も少ないなどの課題も抱えている。フランチャイズ展開への注目度は高く、市場も待ち望んでいるものの、進出のハードルはまだ高いというのが現状のようだ。