世界銀行(WB)はこのほど、最新の東アジア・太平洋地域経済の分析を公開した。これを受けて、ハノイ市内で記者会見したWBリードエコノミスト、ジャック・モリセット氏は、ベトナム経済の現状について「貿易が好調を維持しており、中期的展望は明るい」と評価した。

ベトナムは、経済的変動が激しい世銀が東アジア・太平洋地域で唯一、2019~2020年の経済予測を据え置いた国となった。発表された最新のレポートによると、ベトナムの国内総生産(GDP)成長率は、2018年の7.1%から今年は6.6%に減速する見通しで、さらに2020年と2021年はそれぞれ6.5%に鈍化すると予想している。

一方で、世界的に貿易面の緊張が高まるなかでも、貿易面は良好な成果を示した。ベトナムの経済成長や予算は維持されており、GDPにおける公債比率は65%の許容限度よりもかなり低い2016年の59.6%から、さらに2019年には54.9%に減少するとした。

ベトナムはまた、世界経済フォーラムが算出する世界競争力指標(GCI)の順位でも、前年より10位も順位を上げた。モリセット氏は「ベトナムの経済改革が、他国と比べても迅速に実行されていることを示している」とした。

今年1~9月の9カ月間の海外直接投資(FDI)に関していえば、ベトナムは依然として、魅力的な投資先であり、域内の他の国々よりも投資金額が多かった。しかし、モリセット氏は、「ベトナムは、国内企業とFDI企業との連携が依然として希薄で、政府は両者を結び付けるための措置をとる必要がある」との課題も指摘した。

また、世銀の専門家らは、ベトナムの貿易が開放的であり、政策が限定的であることなどから、世界経済の激変への対応力が脆弱であることを警告した。 貿易は世界的緊張が高まっており、世界経済が想定以上に減速している現状が、今後、ベトナムの経済成長を抑制する圧力となる可能性があるとの見方を示した。

世界銀行東アジア・大洋州地域担当チーフエコノミストのアンドリュー・メイソン氏は、「ベトナム政府は、経済的競争力を強めるために、経済構造の改革に費やす努力と速度を倍増させ、競争力を強化すべきだ」と、今後、短期的には投資誘致の開拓に力を入れるよう促した。