製造業のデジタル化や自動化を促す「インダストリー4.0」が、ベトナムの現代社会と経済に与える影響は小さくない。小売業界も例外ではなく、ネットを活用した新しい販売手法の開拓のほか、物流や新商品開拓など、大幅な変化への適応を余儀なくされている。

インダストリー4.0の影響
従来の小売店や販売手法などにとって代わるオンライン販売や通信販売の台頭、新技術を応用した支払いなどの新しい電子商取引手法の登場など、インダストリー4.0は、ベトナムの消費者の買い物習慣を大きく変革させた。貿易省傘下の国内市場局のレー・ビエット・ガー副局長は、この状況を、「インダストリー4.0は、時間の短縮や効率化などで、ベトナムの商品流通を大きく改善・変革している」と指摘した。

買い物の一連の作業のなかでムダがそぎ落とされ、消費者にとってより便利になっただけではなく、インダストリー4.0は、商品の在庫管理などにも影響を与えた。ベトナム人消費者向けに、品のよい商品が出現した、産地・生産者などの明らかな商品の提供が増えている、商品の品ぞろえが幅広くなる―といった変化が起きている。

消費者の行動にも変化
新しい技術の応用によって、消費者の行動も一変した。また、小売業者らの側も配送手法の多様化などが可能になり、結果的に顧客により多くの利便性をもたらすことになった。しかし、専門家によると、小売業はこの好機を十分には有効活用できておらず、さらに前向きな変化が必要だと指摘する。

アメリカの市場調査会社、ニールセンのベトナム北部地域担当、ダン・トゥイ・ハー局長は、ベトナムの小売市場の制御戦略が消費者に焦点を当てられていることから、「小売業者らは、商品販売店を設置する前に、詳細で大規模な消費者調査やマーケティングを行って消費者の行動を把握し、分析しておく必要がある」と話す。また、管理ソフトの導入などで消費者ニーズや消費者心理を掘り起こし、将来顧客となりうる市民に適切に対応するためのデータ収集が必要だとする。

小売り専門家のブー・ビン・フー氏は、「迅速で持続可能な小売り網をベトナムで作り上げるために、国内の配送システムなど小売り販売流通網をスピードアップさせ、インフラを整備するための再計画が必要だ」と指摘した。一方、流通配送ネットワークを再構築するための国の政策の見直しも不可欠で、「市場をけん引できるような大規模の国内小売企業の構築を優先すべきだ」とした。

小売業の側でも、競争力が向上するために、仲介業者の介入をできる限り省く工夫や、理不尽な中間マージンの削減などが求められており、製造企業が消費者に対し、高い品質の製品を提供するよう促すことが不可欠だ。また、効率よく、定期的に消費者に提供できるよう、農産物製造や食料品の原材料栽培のための生産地域が形成する必要がある。例えば、各地に農産物と食料品の購入センターを設置▽競争力のある商品の品質管理支援▽手ごろな価格で消費者に提供できる競争力のある製品の開発―などが必要だとした。