ベトナムのコメ、対中輸出は大幅減も新市場開く機会に

今年初めから中国の業者が、ベトナムからのコメの輸入を控えるようになったため、ベトナムのコメの輸出は大きな危機に直面した。この傾向は年末にかけても続くとみられるが、ただこれを機に、コメの輸出を中国から新しい市場へと転換を図る可能性も出てきている。

ベトナム農業・地方開発省農業加工・市場開発局によると、中国へのコメの輸出は、量、金額ともに急激に減少している。今年1~8月では輸出量は34万7,520トン、輸出額は1億7,374万ドル(約190億円)であり、前年と比べて輸出量は67.8%、金額ベースでも67.2%減少した。

コメの輸出を行うビナフード1のゼネラルディレクター、ブイ・ティ・タイン・タム氏は、中国が品質管理と食品安全検査を強化したことが、輸出減の原因ではないかとみている。また、フィリピンもコメの輸入を規制するため、衛生植物検疫措置(SPS)を厳格化するなど、より多くの非関税措置の発動を検討している。

ただ、タム氏によれば、こうした課題があるにもかかわらず、ベトナムのコメ輸出は計画通りに進むとみられるが、一方で、「コメ産業は、もっと品質向上に注意を払うべきだ」とも言う。

一部の専門家は、「主要な競争相手であるタイでは、深刻な干ばつにより、コメの生産は大きな影響を受けた。そのためベトナムのコメ輸出は、新たな市場を開拓できる可能性がある」と指摘する。例えば、コメの3割から4割をタイから輸入するシンガポールは、ベトナムやカンボジアといった他の国々から輸入し、供給元を多様化させる戦略を検討している。

さらに、輸入米の50%を米国から購入する日本も、ベトナムを含むCPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)加盟国からの輸入を検討。また、米国の一部の輸入業者は、ベトナムから購入する製品リストに、コメを追加した。今後ベトナムには、コメの供給と品質を確保しつつ、輸出市場を拡大していくことが求められる。

ベトナムのコメ輸出は今年1~9月の間、推定で520万トンに達し、輸出総額は22億4,000万ドル(約2,452憶円)。前年比で輸出量は5.9%伸びたものの、金額ベースでは9.8%下落した。主要な輸出先はフィリピンで、同国の輸入米に占める割合は36%を超える。