銀行M&A、企業統治や情報開示がネック=格下げも資金調達に障害

 ベトナムの経済成長や金融市場の拡大を背景に、海外企業によるベトナムの銀行を対象とした企業の合併・買収(M&A)や資本提携が増えている。ただ、企業統治上の問題や規制などのためうまくいかない提携も目立つのが実情だ。ベトナム・インベストメント・レビュー紙(電子版)が伝えた。

 ◇仏銀行は出資引き揚げ
 2020年に入ってすぐ、日本のあおぞら銀行が中堅のオリエント商業銀行(OCB)と資本・業務提携する方針を発表した。しかし、そのOCBに18.68%出資していた仏大手銀行のBNPパリバは、17年に資本関係を解消。また、19年3月には仏ソシエテ・ジェネラルも東南アジア商業銀行(SeA銀行)への20%の出資を引き揚げており、市場関係者は、海外との資本提携は必ずしもバラ色ではないと注意喚起する。
 先ごろ開かれた「M&Aフォーラム」会議で示されたリポートによると、市場環境の変化で大型の提携案件が再びみられるようになり、20年のM&A規模は総額約75億ドルに及ぶと予想されている。ブオン・ディン・フエ副首相は先に、外資全額出資の銀行設立を認めない考えを改めて示しており、このためベトナム参入を望む外国銀行にとってM&Aが最も手っ取り早い手段だ。
 ◇情報開示、企業統治などネックに
 しかし、M&Aを進めるに際しては情報開示の不十分さ、企業統治などがネックとなりそうだ。
 まず海外投資家は、ベトナム企業が遅れている財務規律の改善を強いる。マレーシア系のメイバンク・キムエン証券のファン・ズン・カイン投資ディレクターは「国内銀行は国際会計基準(IFRS)が規定する情報開示を求められるが、内外基準の大きな違いは国内銀にとって難題」と指摘する。
 国際会計事務所EYベトナム法人のグエン・トゥイ・ズオン会長は、「海外投資家は、ベトナムの会計基準を理解するのに苦労し、出資先企業の資産査定の過程が複雑になっている」と話す。米法律事務所ベーカー&マッケンジーのベトナム法人パートナーであるオアイン・グエン氏は、ベトナムの銀行の多くは資産査定を拒み、関心を寄せる投資家を遠ざけているという。
 また海外投資家は、買収先として検討する銀行の企業統治を重視する。買収後はよりグローバルな規模で事業を行うようになり、役員会の負担が大きくなるためだ。例えば横領や詐欺のスキャンダルに見舞われた輸出入銀行は、その思慮分別について疑問視され、海外投資家からそれほど関心を集めていない。
 外資の出資比率上限が30%以内と定められた規制も問題点だ。エコノミストのカン・バン・ルック氏は、政府が外資規制を緩める必要があると訴えている。
 ◇格下げで出資呼び込み困難に
 20年の銀行M&Aに影を落としそうなのは、米格付け大手ムーディーズ・インベスターズ・サービスの19年末の発表だ。ムーディーズは、ベトナムの銀行18行の格付け見通しを引き下げた。ルック氏は、これにより「ベトナムの銀行が海外投資家から資金を調達するのに支障が生じる」と懸念している。
 国有銀大手ベトナム農業地方開発銀行(アグリバンク)への投資を検討していた投資家は、同行が昨年株式新規公開(IPO)を延期した際に投資を手控えた。ムーディーズの発表は投資家の懸念を拡大させ、銀行の資金調達を一段と困難にする可能性があるとみられている。(時事)