中国で新型コロナウイルスによる肺炎感染拡大の影響で、繊維製品やくつ、農産物などの製造分野やそれらの中国向けの輸出が、短期的に大きな打撃を受けることは確実だ。それに対応するべく、中国以外の原材料輸入先を開拓し、製品の販売市場を海外の他の国々にシフトするなど、早くも多くの企業が対応に動き出している。

SSI証券の評価によると、ベトナムは近年、国際貿易が急成長しており、ベトナムの国内総生産(GDP)に占める輸出入総額の割合もとても高い。 このため、重要な原材料供給源である中国の新型肺炎による混乱は、ベトナムの経済成長にとって足かせに可能性があるのだ。

感染拡大を防ぐ措置の一環としてベトナムは、今月8日まで、中国との国境ゲートをいくつか閉鎖して中越間貿易を制限。 さらに、新型肺炎の影響を受けている地域からの旅行者に対してはビザ発行も制限した。 このため、農産物などの輸出は、影響を受けることは確実だ。

分野別にみると、繊維産業のなかでも、アパレル産業は新型肺炎の流行で直接、需要に影響を受けないと予測している。製品を中国に輸出している企業がほとんどないからだ。
ただし、中国のGDPが減速すれば長期的には、ベトナムの消費に悪影響が及ぶ可能性が高い。各地の製造工場が2月いっぱいは閉鎖される可能性が高いほか、原材料のほとんどの供給を中国に依存しており、その供給量が大きく減少するとみられるからだ。

靴や皮革製品の製造業界尾も同じ傾向だ。靴製造のザーディン社では、テト(旧正月)前に、第1四半期の生産に必要な原材料は入手済みだという。だが、同社のグエン・チー・チュン社長は「肺炎の流行で状況が一変し、今後も、何が起こるか予測できない。中国は革製品や履物業界の最大の原材料供給国であるため、長期的にはビジネスが非常に困難になるだろう」と心配する。チュン社長は、中国の肺炎が長引き、原材料が不足するという最悪の場合を想定し、韓国や日本、バングラデシュなど新たな市場からの原材料輸入を検討し始めている。

ベトナム果物野菜生産協会のダン・フック・グエン事務局長は、「短期的にはベトナムの生産者は、減少する中国産の野菜や果物の代替として、輸出を増やすことができる可能性がある」と話す。

しかしながら、新規市場への参入は、市場によってクリアすべき基準が多様であるため、簡単ではないという。「現在、ベトナムの農産物は中国の輸入基準で生産をしている。これらの製品をヨーロッパやアメリカへそのまま輸出できる可能性は低い」と指摘する。

これらの業界以外でも、SSIは魚介類の輸出も、新型肺炎の流行によって大きく影響されそうだ。2019年にベトナム産のエビの16.1%、パンガシウス(白身の淡水魚)の33%は中国輸出向けに生産されており、全海産物の輸出先を見ても16.5%は中国市場への輸出が占められていたからだ。これらの輸出は第1四半期だけでも、大きく縮小すると予想される。これらの業界では、南アフリカや欧州諸国へと輸出先を分散させるべく、必死に新規の取引先を探し、利益減少を食い止めようと動き出している。