2019年1~11月で、ベトナムの輸出額は7.8%増加し、国会が設定した目標を達成した。多くの先進国や近隣諸国の輸出が減少、停滞する中で極めて重要な成果と言える。その背景には、発効済みの自由貿易協定(FTA)の利用拡大があり、貿易収支は90億ドル(約9835億円)の黒字となった。

■対日輸出は7.6%増
2007年にWTOに加盟して以降、ベトナムは14のFTAを締結し、さらに3件が交渉中だ。FTAを通じて、ベトナムは輸出市場を開放し、グローバル生産やバリューチェーンにより深く参画する機会を得た。

商工省によると、近年、ベトナムは輸出拡大に向けてFTAを積極的に利用しており、FTAを発効したすべての市場への輸出額が大幅に増加。とりわけチリ、インド、韓国、中国への輸出は急成長を遂げている。

日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、ユーラシア経済連合を含むFTA相手国に対しては、相互補完的な商品構造による輸出を実施。2019年1~11月の輸出額は、前年同期に比べて対日本は7.6%、対韓国は10.1%、対ASEANは2.5%、対ロシアでは9.1%、対ニュージーランドでは6.8%増加した。CPTPP加盟国への輸出も大幅に伸びた。

また同時期、カナダに対する輸出額は35億ドル(約3824億円)、メキシコへは27億ドル(約2950億円)となり、前年同期に比べてそれぞれ27.2%、29.5%アップした。

2018年、優遇関税を受けるために必要な原産地証明書(CO)を発給した輸出は462億ドル(約5兆488億円)で、FTA市場の貿易の39%を占めた。対韓貿易の利用率は60%だったが、対日貿易では37.8%にとどまった。

こうした中、輸出が目立って伸びたのは国内企業であり、2019年1~11月の国内企業の輸出額は18.1%増加。外資企業の輸出額の伸び(3.8%)の約5倍となった。

外資企業はベトナムの対外貿易の約7割を占めているが、成長は緩やかで、例えば携帯電話・同部品は前年比でわずか5%の伸び。一方、国内企業の輸出は、繊維・織物が10.4%、靴が13.5%、非木製家具が46.4%伸びた。これらの製品はFTA相手国からの需要が比較的高かったという。

■商工省、輸出拡大後押し
輸出増への動きは、政府、省庁、地方自治体、経済界などが、FTAによる恩恵を得ようと努力してきた成果だ。中でも商工省は、企業がFTAの関税優遇措置や優先権を利用して輸出拡大を図る手助けをしている。

例えば、プロモーションの強化や途上国、潜在市場、新興市場への市場拡大とともに、原産地証明書付与手続きの簡素化、優先的付与のための企業分類、インターネットによる原産地証明書の発給、原産地自己申告制度の促進などだ。

商工省傘下のベトナム商工情報センターの前センター長で、エコノミストのファム・タット・タン氏は、「ベトナムの主な輸出品は、生活に不可欠な消費財であるため、今後もFTA市場で成長を維持できるだろう」との見通しを示した。