コロナウイルスによる新型肺炎(2019-nCoV)がアジア各地で広がるなか、ベトナムでは、中国との国境貿易が一時停止し、早くも経済に大きな影響が出始めている。関係者らが、輸出商品の新たな市場の開拓を模索するなど、抜本的な輸出業支援対策が検討されている。

先週、開かれた商工省などの関係者らによる会合では、早くも現れた新型肺炎の影響や対策が検討された。

商工省傘下の海外貿易局のファン・バン・チン局長によると、昨年、ベトナムから中国向けの輸出総額は410億ドルに達し、このうち70億ドルが農産物の輸出だった。だが、中国側が1月30日にラオカイ国境貿易ゲートを封鎖した影響で、「ドラゴンフルーツを積んだコンテナだけでも約100個が、国境付近で行き場を失ってとどめおかれている」と現状を報告。スイカなどほかの農産物も販売先に届けられるあてがなくなり、その数量は数万トンに及ぶ見込みだという。

今月3日にようやく、ギカン友好国境ゲートなどが開放され、一部で貿易が再開された。だが、中国側が感染の封じ込めのために、人がたくさん集まる行為を禁じているため、国境を越えた後、商品を中国の輸入業者に受け渡すことがままならない状況で、本格的な輸出停滞の解消には至っていない。

専門家らによると、新型コロナウイルスの流行が2カ月ほど続くと試算すると、ベトナムは農産物や海産物の輸出だけで2億から3億ドルもの損害を被ることになるとの見方が有力だ。さらにそれが6カ月にまで期間が延びれば、被害総額は6億~8億に膨れ上がるとみられる。

そこで、チン局長は「これまで中国に輸出されていた農産物や加工品などを他の海外諸国に輸出するため、新市場開拓が急務だ。各地域は輸出先の中国企業などと輸入再開後の具体策について話し合う一方で、製品の新たな輸出先を海外の他国に求めたり、国内での消費を促進したりすべきだ」と述べた。

一方で、商工省計画投資局の代表者は、中国以外の国々との貿易についても、新型肺炎の影響を評価分析する必要性を強調。ベトナム各地での工業生産などについても、病気流行の影響を調査する必要があるとした。

商工省のチャン・クォック・カイン副大臣は、さまざまな機関に対して、影響を受け得る輸出品目を明確にして、具体的な対策をとるよう求めた。

同日、ベトナム国家銀行頭取は、新型肺炎に関する文書No.541 / NHNN-TDを発行し、肺炎流行で影響を受ける企業などへの救済や支援措置の指針を示した。金融機関に対して、企業が円滑に運営を継続できるよう、十分な資本を提供するように求めたほか、金利引き下げや債務返済時期の繰り延べなどの適切で有効な支援策を模索するという。