化学繊維のVNPOLY、国内向けマスク用繊維増産 停滞する中国産原材料輸入を代替

中国を中心に広がるコロナウィルスによる新型肺炎(nCOV-201)の拡大を受けて、ベトナムでは医療用マスクの需要が高まっているにもかかわらず、原材料が不足する事態に陥っている。これまでの原材料輸入を依存していた中国が、新型肺炎で打撃を受けているからだ。その状況を打破しようと、化学繊維メーカー、ベトナム石油化学繊維(VNPOLY)は、マスクの原材料となる延伸加工糸の製造にフル体制で取り組んでいる。

同社はこのほど、5トンの延伸加工糸(DTY)を、ベトナム国内で長年、医療機器供給で高い評価を得ているトミフ医療機器貿易社(Tomihu)に供給したと発表した。トミフでは、新型肺炎予防用の医療用マスクを製造する予定。両社の専門家や技術者らが双方の工場に出向くなどして、製造に向けて相互支援を始めているという。

コロナウイルスが原因の新型肺炎感染が中国からアジアへと急速に拡大するなか、ベトナムでも医療用マスクの需要が急増しているのが現状だ。VNPOLYは医療業界のそのような需要の変化に対応するために、マスク原材料となる延伸加工糸の増産に踏み切った。

これまで、国内の医療用品メーカーは、マスクの原材料の多くを中国から輸入していたが、中国での新型肺炎まん延により、状況が一変。原材料の輸入が停滞し、メーカーの原材料在庫が残り5~7日の製造分になっているという。医療用品メーカーは、インドや南アフリカ、エジプトなどからの原材料の代替輸入を必死で探し求めているが、世界的な肺炎への警戒の強まりによって、原材料は各地で不足しており、価格も高騰している。

VNPOLYのもとへは韓国や日本、アメリカの顧客からも注文や問い合わせが寄せられているというが、同社はベトナム国内での肺炎感染予防を最優先し、ひとまずは国内需要に対応する方針を決めた。同社のダオ・バン・ゴック社長は「弊社の延伸加工糸は当面、国内の医療用マスク製造企業へ優先的に卸す。もちろん、適正価格で販売し、顧客対応にも応じている」と話す。

同社の製造する延伸加工糸は、人体への有害な影響がない安全な繊維を認証する国際基準「エコテックス・スタンダード100」に適合。安全基準が特に厳しい韓国や日本、アメリカの基準も満たし、医療用マスクの原材料として、安心して利用できるものだ。

同社では、医療従事者をはじめ、マスクを一日中着用する人たちの快適性も考慮した素材製造を目指す。ゴック社長は「安全な素材で、感染を最大限に防ぎながら、快適に過ごせるマスクの製造の一翼を担うことで、国内での感染拡大を抑止し、ベトナム社会に貢献したい」と話した。